写真提供:日刊工業新聞/共同通信イメージズ
「脱炭素化」「安定供給」といった難題への対応を迫られる日本のエネルギー業界で、生成AIの活用が本格化している。「AX(AIトランスフォーメーション)」は業界にどのような未来をもたらすのか。『エネルギー業界を変革するAX戦略』(大植択真、山岡義史、出馬弘昭著/電気書院)から一部を抜粋。抜本的な生産性向上や新たな価値創造を実現するためのヒントを探る。
従来の「送配電事業会社」の枠を超え、新たな価値創造に挑む東京電力パワーグリッド(東電PG)。AIやデータを駆使して、社会インフラをいかに進化させようとしているのか。
東京電力パワーグリッド
業界の未来と「まちと一体化」したAIビジョン
■「Utility3.0」から「MESH構想」へ――思想の源流と生物のアナロジー(類推)
『エネルギー業界を変革するAX戦略』(電気書院)
1965年生まれ。東京大学大学院工学系研究科電気工学専攻博士課程修了。1993年、東京電力に入社。電力システム、電力技術に関する業務に携わり、2016年に東京電力ホールディングス常務執行役、2017年から東京電力パワーグリッド副社長、現職。同社の最高技術責任者(CTO)を兼務。
岡本氏の構想の原点は、2017年に上梓(じょうし)した共著書『エネルギー産業の2050年 Utility3.0へのゲームチェンジ』(日本経済新聞出版)にあります。岡本氏は執筆当初、EVの普及がもたらす社会変革に注目し、モビリティとデジタル、エネルギーの分野を統合して考えるようにしなくてはいけないという捉え方を始めていました。モビリティ、エネルギーという従来の要素に対して「デジタル」の存在感が急速に増してきた時代です。
しかし、その後の数年で状況は、岡本氏の当初の予想を超えて変化しました。「電脳」、すなわちデータセンターやAIが消費する電力が急増したのです。当初の構想の中心であった、EVに代表される「電動」以上に、デジタルである「電脳」が急速に拡大したのです。
この変化を目の当たりにし、物理空間の活動を支える「電動」や「電熱」と、サイバー空間を支える「電脳」、これらすべてが電力に依存する社会において、グリッド(送配電網)が果たすべき役割の重要性を再認識することになりました。








