関西電力の森望社長
写真提供:共同通信社

「脱炭素化」「安定供給」といった難題への対応を迫られる日本のエネルギー業界で、生成AIの活用が本格化している。「AX(AIトランスフォーメーション)」は業界にどのような未来をもたらすのか。『エネルギー業界を変革するAX戦略』(大植択真、山岡義史、出馬弘昭著/電気書院)から一部を抜粋。抜本的な生産性向上や新たな価値創造を実現するためのヒントを探る。

 ChatGPTの登場を受け、DX戦略を作り直した関西電力。同社が目指す「AIファースト企業」への変革プロセスをひもとく。

関西電力
「AI産業革命」を見据えたデジタル改革
――ビジョンと組織風土のあり方

■改革を促した強い危機感とAIファースト企業の姿

上田 晃穂(うえだ・あきお)氏
1997年、関西電力に入社。2016年、ケイ・オプティコム(現:オプテージ)へ出向し、格安スマートフォンmマイネオineoの事業責任者。関西電力では、IT戦略室IT企画部長を経て、2024年からIT戦略室長・理事、現職。

 重厚長大で変化の少なかったエネルギー事業において、経営環境の変化により関西電力では、大きな危機感が生まれていました。第1章で紹介した「5D」の変化(脱炭素化、電源分散化、自由化、人口減少、デジタル化)を踏まえ、「関西電力は、関西電力のままであり続けてはいけない」という思いが高まっていました。そのような状況のなかで解決策のひとつとして注目されたものがAIでした。

 生成AIが急速に普及し始めた2022年を振り返り、上田氏は、当時の状況を以下のように表現します。

「チャットGPTが2022年の11月末に出て、それを見たときに、この技術は、世の中を変える産業革命レベルの技術になるだろうと思いました。そして、それよりも前に作っていたDX戦略は、その技術が出る前に作ったものなので、もはや通用しないだろうと思ったんですね」

 この「AI産業革命」が、将来的に確実に到来する。仮にそれが2030年に到来すると、一度振り切って、世の中にAIが当たり前のように存在する世界から戦略を作り直したほうがよいのではないか。そのような考えから、DXビジョンを描き直し、そこへ至る道筋をロードマップとして策定し直したのです。そこで目指す姿として設定されたのが「AIファースト企業」でした。