写真提供:日刊工業新聞/共同通信イメージズ
「脱炭素化」「安定供給」といった難題への対応を迫られる日本のエネルギー業界で、生成AIの活用が本格化している。「AX(AIトランスフォーメーション)」は業界にどのような未来をもたらすのか。『エネルギー業界を変革するAX戦略』(大植択真、山岡義史、出馬弘昭著/電気書院)から一部を抜粋。抜本的な生産性向上や新たな価値創造を実現するためのヒントを探る。
熟練社員の暗黙知に支えられてきた発電所の運用。中国電力は、AI導入当初の「現場では使えない」という評価をいかにして覆し、技術を定着させたのか。
中国電力(火力発電)
石炭火力発電所における燃料運用最適化と脱炭素化への対応
『エネルギー業界を変革するAX戦略』(電気書院)
■ 属人化からの脱却とGX時代への挑戦
2006年、中国電力に入社。入社後は、火力発電所の運転、運用、管理業務を主に担務。電源事業本部(火力技術グループ)担当副長、現職。
中国電力の三隅(みすみ)発電所(島根県浜田市)には、燃料となる石炭を貯蔵しておくための巨大なサイロが18基も備わっています。そこに運び込まれる石炭は、産地や銘柄によって熱量や水分量などの性質が一つひとつ異なり、非常にデリケートな管理が求められます。
燃料運用の担当者は、これら無数の石炭の特性を頭に入れ、数カ月先の在庫量や船の入港スケジュールまで見通しながら、日々の運用計画を立てなければなりません。この計画の良し悪しが、発電所の安定運転と経済性を直接左右するのです。
しかし、この極めて重要な業務は、長年にわたって特定の熟練担当者の知識と知見に大きく依存してきました。この「属人化」は、一見すると安定した運用を支えているように見えますが、その一方で、「その貴重なノウハウをどうやって標準化し、次の世代へつないでいくか」という、組織としての大きな課題を抱えていました。
さらに2022年、新たな挑戦が加わりました。二酸化炭素削減のため、木質ペレットなどのバイオマス燃料を石炭に混ぜる「混焼」の本格化です。燃焼特性が異なるバイオマスの導入により、ただでさえ複雑だった運用の難易度は、さらに上昇しました。
こうした複合的な課題を前に、中国電力は、AI活用による抜本的な解決を決断します。








