国内企業のDXの最新動向を紹介するこの連載では、これまで製造業を取り上げてきたが、今回から建設業を取り上げたい。まず今回は、建設業のDXで重要とされるBIM/CIMモデルの活用、無人化施工・遠隔管理、AI・ARの活用、建物OS活用について見てみたい。
【注目の動き】 BIM/CIMモデルが業界のDXを加速
BIM (Building Information Modeling)/CIM (Construction Information Modeling)とは、建物・建設物の3Dモデルをコンピューター上に作成し、関連する各種情報(材料、コスト、管理情報などのデータ)を加えてデータベース化し情報管理を行う手法である。
BIM/CIMにより、建物・建設物の計画・設計・施工・管理維持などの全工程で、関係者間で情報を一元化して共有できるようになる。大手の建設企業では既に利用が進んでいるが、国は中小企業への普及の推進を図っている。
2020年4月、国土交通省は2023年までに同省が発注する全ての公共事業(小規模工事を除く)に、3次元モデルBIM/CIMを原則適用することを決定。国土交通省から「3次元モデル成果物作成要領」などが提供され、対応が必要になっている。その対応ができるように、国土技術政策総合研究所は、国土交通省発注工事・業務の3次元データ(BIM/CIMデータ)を一元管理・分析するため、DXデータセンターを整備中。端末側にBIM/CIM用のソフトウエアがインストールされていなくても、BIM/CIMデータが閲覧可能なクラウドの仕組みを提供予定である。
オープンデータを活用する動きもある。2021年3月26日に、国土交通省による3D都市モデル「Project PLATEAU」が本格始動した。全国56都市の3D都市モデルが整備され,オープンデータとして公開されており、そのデータをBIM/CIMと組み合わせて有効活用することが期待されている。例えば,森ビルは、「虎ノ門ヒルズ ビジネスタワー」の細密な建物屋内モデルを制作し、Project PLATEAUの3D都市モデルと連携することで、バーチャル空間において訓練を実施できるシミュレーションツールを開発した。
建物・建設物のデジタルデータ化(BIM/CIMモデル化)が普及することで、さらなる発展的な活用が促進されると考えられるため、建設業界全体のDX化で最も注目の取り組みといえる。
【施工方法】デジタル化で無人化施工・遠隔管理へ
建設機械の無人運転、建設ロボット活用、遠隔操作などによる無人化施工や、建設現場の遠隔管理が進みつつある。労働力不足の解消、作業現場での生産性・安全性の向上、コスト削減といった建設業界の課題があるためだ。
それらは課題に対する業界全体の動きとして、2021年、鹿島建設・清水建設・竹中工務店など大手建設会社16社によって「建設RX(ロボティクストランスフォーメーション)コンソーシアム」が発足した。施工ロボット・IoTアプリ等に関する共同研究開発のためのコンソーシアムであり、技術開発のコスト削減、リスクの分散、開発期間の短縮化を図り、共同研究開発の普及を加速する狙いがある。
企業別の事例としては、鹿島建設の「A⁴CSEL」(クワッドアクセル)は、主にダム工事での自動化で利用されており、複数の建機が自律的に連携できる仕組みを実現している。鹿島建設の「3D K-Field」は、デジタルツインを活用したリアルタイム現場管理システムであり、遠隔管理を可能にする技術である。2018年に策定された「鹿島スマート生産ビジョン」では、「管理の半分は遠隔で」のコアコンセプトを掲げており、現場事務所や本・支店などの遠隔地から現場の状況を確認する遠隔管理システムとしての活用を推進している(鹿島建設のDXの詳細はこちら)。
こうした無人化施工・遠隔管理は労働力不足の解消や現場の労働環境改善につながることが期待できる。