残念ながらインフラ関連の事故が定期的に報じられる状況が続いている。
特に衝撃的だったのは、2012年12月2日に中央自動車道の笹子トンネル内で発生した天井板落下事故である。9人もの尊い命を奪う結果となったこの事故はインフラを適切に管理することの重要性を改めて知らしめるとともに、「ヒトがメインとなるインフラ管理の限界」を示すものでもあったといえよう。
その後、事故を受けて、国土交通省では、適切なインフラマネジメント方法について急ピッチで再検討が行われた。例えば、トンネルや橋梁については5年に一度の法定点検を行うことが義務付けられ、具体的な点検方法の策定・通知などが行われるなど、事故を起こさないような環境整備が進められているところである。
深刻化する人手不足と止まらない老朽化
法定点検が義務付けられ、点検方法についても体系的に整理されればそれで安心かというとそうではない。
例えば、日本国内には72万の橋、1万のトンネルが存在するが、これらインフラを管理している自治体職員数は14万人弱程度しかいない(厳密には橋やトンネルの管理者には国や高速道路会社等も含まれることに留意)1。14万人弱というと十分な人数がいると思うかもしれない。しかし、管理対象となるのは土木インフラ全体であるから、橋やトンネルだけではなく、河川設備(水門、ダムなど)、下水施設(下水管、処理場)、港湾施設、公園・・・など非常に多岐にわたり、かつ管理数も多いのが実状である。
端的に言うと、人材が全く足りていないのである。特に、市町村においては、土木部門の技術系職員がいない自治体も半数近くあるのが実態である2。また、職員数もこの先、減少する可能性が高いと考えられ、限られたリソースでいかにインフラを管理すればよいのかが模索されている。
加えて、問題をさらに難しくするのがインフラの老朽化である。わが国のインフラはその多くが高度経済成長期に整備されており、既に供用年数が50年を超えているものも多く3、老朽化が進み、手当てが必要となるインフラが増える中で、どのように適切な管理をしていくのかという問題が今後、深刻化することは確実である。