インフラマネジメントのDXの2つの観点
では、どうすればよいのか。
課題は、これまでよりも少ない人材でこれまでより多くのインフラを安全かつ効率的に管理する仕組みを整備することである。そのためには、デジタル技術がヒトをサポートしながらインフラマネジメントにあたる世界を実現する必要がある。本稿では2つの観点を紹介する。
(1)デジタル技術による既存プロセスの高度化
イメージアップのために、橋梁における萌芽事例を紹介したい。
例えば、千葉県君津市ではドローンを活用した橋の点検の実証が行われた4。従来であればアームのついた特殊車両を活用したり、ロープで点検員がぶら下がることで橋の下部の点検をしていたところ、ドローンを活用することで点検が必要な箇所にすばやく、かつ安全に接近できるようになった。
また、富山県富山市では画像解析AIを用いて橋の劣化度を診断する実証が行われた5。現状では一部開発中であるが、仮に画像を活用して瞬時に橋の劣化度を評価できるようになれば、その時間短縮効果は非常に大きなものとなろう。
このほか、センサーを活用した事例として、熊本地震で被害を受けた橋の通行止めを解除するかどうかの判断に、橋に複数設置した歪みセンサーのデータを活用した例がある6。これらさまざまな取り組みにより、「これまでよりも少ない人材でこれまでより多くのインフラを管理する仕組み」が構築されようとしているところである。
このまま技術開発・現場導入が進めば、従来は数年に一度しか詳細な点検ができていなかったのが、常に自動で点検がなされ、何か問題がありそうであれば即座にアラートが発せられるような環境が整うことになる。その段階に至ると、もはや「点検」や「現状確認」というプロセスは意識されないことになる。
(2)デジタル技術によるインフラマネジメントの広域化
インフラの老朽化は止まることがなく、いつ事故が起きるとも限らない。また、現状では多くのインフラが地域単位で管理されているが、インフラ事故は地域ごとに等しく発生するわけでもない。そのような混沌とした状況をうまくハンドリングするためには、できるだけ広域で管理を行い、問題がある地点に柔軟にリソースを振り分けられる余白を設けることが肝要である。
そのためには情報連携が重要であり、リアルタイムに現状を一元的に把握し、状況に応じて、地域に閉じずに外部と連携しながら柔軟にリソースを投入することが必要となる。
従来の点検では、ある程度、決められた範囲で決められた方法で進めざるを得ない面があったが、適切な情報連携基盤を整備・活用することで、このような柔軟な運用が可能となる。
なお、日本政府において、インフラデータプラットフォームの構築が進められているところであり、将来的にどのような機能が具備されるかが注目されるが、「見える化」を超えて、どのようなインフラマネジメントを実現できるのかが問われていると言える。