「インフラ」が注目を浴びない社会の実現に向けて

 「インフラ」は、普段は意識されないものの、その存在がなければ日常生活すら満足に行えないほど欠かせないものである。故に、われわれは何か問題が発生した時に「インフラ」の存在に改めて気付くことが多い。

 このことを踏まえると、特に市民の目線からは、「インフラ」に思いが至らない社会こそが理想的な姿であると断言できよう。特に、冒頭で紹介した笹子トンネルの事故直後のように、連日、インフラ関連のニュースが新聞のトップを飾るような事態を二度と起こしてはならない。

 これまでは現場の職員や専門家が必死で事故発生を防いできた。まさに人力でマネジメントを進めてきたのである。

 しかし、状況が変わる中でデジタル技術も成熟化してきており、新たな技術を取り入れることを積極的に検討すべきタイミングが訪れていると言える。昨今では、さまざまな領域でヒトとデジタルの協調が見られるが、インフラマネジメントにおいても、ヒトとデジタルが協調しながらインフラ事故を防ぐ仕組みが必要である。

 もちろん、デジタル技術を活用するが故の問題もあり、慎重にならざるを得ない面もあるが、「デジタル技術を活用するケース」と「デジタル技術を活用しないケース」で訪れる未来がどのように変わるのかを十分に考えてみるべきであり、「デジタル技術を活用するケース」と「現状」を比較するべきではない。

 ますますインフラの劣化が進み、管理側の人材が減少するであろう近未来を考えると、現状の延長線上では大きな事故が起きる可能性は否定できない。そのような事態に陥らないようにするためにも、本稿で紹介したようなデジタル技術のさらなる研究開発やインフラマネジメントのデジタル化を、政府を中心に推し進めるべきである。その必要性は高まることはあれ、低くなることはないであろう。

(出所)
1 https://www.soumu.go.jp/main_content/000678577.pdf
2 https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/seicho/20200311/200311seicho07.pdf
3 https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/maintenance/02research/02_01.html
4 https://www.city.kimitsu.lg.jp/soshiki/3/27276.html
5 https://www.nttdocomo.co.jp/info/news_release/2019/12/05_00.html
6 https://socialsolution.omron.com/jp/ja/news/20160831.html