「薄い」「軽い」「曲げられる」といった従来の太陽電池にはない特徴を持つ次世代型太陽電池「ペロブスカイト」が注目されている。2040年の世界市場は2兆4000億円と予測されており、政府も大きな期待を寄せる。2024年9月に著書『素材技術で産業化に挑む ペロブスカイト太陽電池』(日刊工業新聞社)を出版した日刊工業新聞社の葭本隆太氏に、ペロブスカイト太陽電池が注目される背景と、先行する各社の動きについて聞いた。(前編/全2回)
ペロブスカイト太陽電池の国内普及が期待される理由
――著書『素材技術で産業化に挑む ペロブスカイト太陽電池』では、国内で始まったペロブスカイト太陽電池の実証実験を紹介しています。注目を集める背景には、どのような要因があると捉えていますか。
葭本隆太氏(以下敬称略) 太陽光発電の導入を増やす新たな手段としての期待の高まりが大きいと思います。脱炭素やカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)が世界的な目標となる中、再生可能エネルギーが重要視されており、その打ち手として太陽光発電の普及拡大が期待されています。
太陽光発電による再生可能エネルギーを増やすためには、2つの方法が考えられます。一つは太陽光発電自体の導入量を増やすこと、もう一つは変換効率を高めて設備当たりの発電量を増やすことです。
ペロブスカイト太陽電池は、「薄い」「軽い」「曲げられる」という特性を持たせられます。そのため、従来型のシリコン太陽電池では設置の難しかった耐荷重の低い外壁や工場の屋根にも設置が可能です。そうした特性を生かして、日本国内でも導入量を増やせる可能性があります。
変換効率を高める、という観点では、シリコン太陽電池にペロブスカイトを積層し、エネルギーの変換効率を高める「タンデム型」と呼ばれる仕組みが期待されています。富士経済による「2040年の世界市場2兆4000億円」という予測も、その7割をタンデム型が占めています。
現状、シリコン太陽電池を製造しているのは、ほとんどが中国メーカーです。シリコン太陽電池をさらに高付加価値化するために、中国メーカー大手がタンデム型の研究開発を進めており、その動きが市場規模拡大へのインパクトをもたらすと見られています。