〈左〉カネカの角倉護 取締役副社長(右)と山本憲治 太陽電池・薄膜研究所長(左)。(撮影:与儀達久)/〈右〉ペロブスカイト シースルー太陽電池。ペロブスカイト太陽電池はシースルータイプへの展開も可能だ

 1949年に鐘淵化学工業として創立した化学メーカー、カネカ。塩化ビニル樹脂などの製造からスタートし、1980年代からは太陽電池の製造にも挑戦。薄膜シリコン系、ヘテロ接合型など技術革新を進めてきた。現在は「太陽光発電の老舗」としてシリコン系太陽電池モジュールを製造・販売すると同時に、次世代の太陽電池「ペロブスカイト太陽電池」の研究開発にも取り組む。同社はペロブスカイト太陽電池をいかに社会に溶け込ませようとしているのか。ペロブスカイト太陽電池の研究開発とビジネスの最前線を追う連載の第2回は、カネカの取り組みを紹介する。(第2回/全3回)

<連載ラインアップ>
第1回 失われた太陽光発電世界シェアを取り戻せるか? NEDOが支援する「軽くて曲がる」次世代太陽電池の大きな可能性
■第2回 40年来の薄膜技術を活用、カネカが描く「ペロブスカイト太陽電池」が身近にある未来社会(本稿)
第3回 ぺロブスカイト太陽電池で「どこでも発電所」実現へ 日揮が乗り出す次世代太陽電池ビジネスの勝算


<フォロー機能のご案内>
●無料会員に登録すれば、本シリーズ「再生可能エネルギーのゲームチェンジャー『ペロブスカイト太陽電池』、その研究開発とビジネスの最前線」をフォローできます。
●フォローしたシリーズの記事は、マイページから簡単に確認できるようになります。
会員登録(無料)はこちらから

「メガソーラー」は目指さない

 前回の記事で、NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「グリーンイノベーション基金事業」を紹介した。2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、企業や研究機関の技術開発、実証実験、社会実装などを支援する、国の事業である。カネカは同事業の助成金交付を受け、ペロブスカイト太陽電池の先端的な研究に取り組む企業の1社だ。

 同社は、自社設計の絶縁基材を基板に用い、薄膜シリコン太陽電池の量産技術を活用することで超薄型ペロブスカイト太陽電池を開発。2022年には、フィルム型ペロブスカイト太陽電池で20%に迫る変換効率を実現し、話題となった。

 カネカのペロブスカイト太陽電池戦略を説明する前に、太陽電池ビジネス全般への取り組み方、方針を見ていこう。それを知ると、同社がペロブスカイト太陽電池に力を入れる必然的な理由が見えてくる。

 太陽光発電というと、緑の平地を塗りつぶすように延々と黒いパネルを並べ、売電で稼ぐメガソーラーとのイメージが強いが、カネカ取締役 副社長の角倉護氏は「カネカの太陽光発電はそれらとは目指すものが違います」と述べる。

角倉 護/カネカ 取締役 副社長

1959年、大阪府生まれ。1987年京都大学大学院工学研究科博士後期課程修了、鐘淵化学工業(現カネカ)入社。2009年高機能性樹脂事業部長、2010年執行役員、2012年取締役常務執行役員、2014年代表取締役社長、2020年取締役上級執行役員、2024年より現職。

「太陽電気は地球環境に優しいエネルギーです。使うなら、地球への環境負荷を減らしたり、私たちの生活に直接プラスになる形で役立てたい。ですから、一般家屋やビル、電気自動車など、私たちの生活に身近なものに実装することを目指しています」と角倉氏。

 角倉氏の言葉の通り、カネカの太陽光発電は、同社の定義によれば「Quality of Life(生活の質)」を支え、「素材の力で生活価値をプロデュースするもの」とされている。つまり、同社の太陽電池は生活の身近なところに設置され、生活の質や価値の向上に寄与することを目的としている。