写真提供:日刊工業新聞/共同通信イメージズ

 ROA(総資産利益率)やROE(自己資本利益率)に代わり、今や最も重要な経営指標の1つとされるROIC(投下資本利益率)。ツリー状に分解することで多角的に財務状況や収益性を分析できるため、多くの企業が採用している。『ROICツリーで読み解く経営戦略』(野瀬義明編著/中央経済社)から内容の一部を抜粋・再編集し、村田製作所とニデックのROIC向上策と戦略の違いを解説する。

損益を改善させた村田製作所

 村田製作所とニデックのROICを図表3-4に示しています。両社はROICを経営指標としており、それぞれの2024年度の目標は村田製作所が20%以上、ニデックは15%以上です。

 さて、このグラフから読み取れる情報はさまざまあると思いますが、今回は2つに注目して解説します。

 第一は2011~2012年度ころのROICの低迷です。2011年度の村田製作所は5.7%、2012年度のニデックは3.0%まで下落しています。両社に何があったのでしょうか。

 第二はその後の推移です。村田製作所は、2022年度こそ前年度比で下落したものの、それまでの数年の傾向としては上向きでした。一方、ニデックの直近5年間は8.6%程度であり村田製作所を下回ります。両社の違いをもたらした要因を確認していきましょう。ここからは数字の背景を読み解くために当時報道されていた情報を照らしながらみていきます。