佐川急便デジタル企画部 部長 兼 SGシステム取締役の南部一貴氏(撮影:川口紘)

 社会インフラである物流を担う大手グループの1社であるSGホールディングス。宅配事業「佐川急便」をはじめ、倉庫管理、国際物流などを担う企業体を傘下に持つ。グループの中核会社である佐川急便が進める物流業界全体を対象にしたデジタル変革の現在地と、これからの社会に求められる物流システムの姿を、デジタル企画部長の南部一貴氏に聞いた。

物量の増加を見越したデータ基盤の整備を完了

――南部さんは、古くからSGHグループで物流業界の情報システムを開発されてきました。物流業が扱うデータは、他の業界とどんな違いがあるのでしょうか。

南部 一貴/佐川急便デジタル企画部 部長 兼 SGシステム取締役

1997年佐川コンピューター・システム(現SGシステム)入社。2005年佐川急便 本社 管理本部総務部に異動。2010年SGホールディングス経営戦略部に着任。2016年に佐川急便デジタル企画部長(現職)に就任し、10年ぶりにシステム部門に復帰する。2017年よりSGシステム取締役を兼任。

南部一貴氏(以下・敬称略) どの業界でも業務で扱うデータ量は増えていると思います。昨今の物流業界は主にECの発展に伴い扱う荷物が小口化しており、当社も扱うデータ量は増えています。さらに物流の場合は、1つの荷物に対して、どこで集荷し、どこの物流センターをいつ通過したのかといったトレーサビリティに関する情報も付加されるので、さらに情報量は増加します。

――情報システムを管理するIT部門は、増え続けるデータに対して、ストレージやネットワークなどを含めたインフラの管理で負担が増していったのですか。

南部 かつてはそうでした。メインフレームで稼働している基幹システムをはじめ、古くから使用されてきたシステムが多数存在し、機能を追加するたびにシステムの数が増え、サイロ化していきました。また、それぞれのシステムが5~7年ごとに更新時期を迎えるため、更新作業の負担も増え、業務が複雑になっていきました。

 この問題を解決するため、2005年から2015年に掛けて管理業務の効率化と、システムの拡張性を両立させるために、「SGHプラットフォーム」と呼んでいる全社共通基盤を構築しました。2016年以降にシステムを活用した業務改善等を進め、レガシーのシステム管理からの脱却を果たしました。

 このプラットフォームは、オープンな技術を使っていることも特徴です。導入に合わせてシステム開発、保守の内製化を実現し、機動的な体制を確立しました。また、今後のデータ量の増加を予測しながら、5年や7年という従来の更新期間にとらわれない柔軟なシステムの拡張が可能になり、全体としてITコストの大幅な削減にも役立っています。