太陽電池は建物の外壁や窓、車のルーフにも

 実際、2000年初頭からカネカは一般家屋向けの瓦と太陽電池が一体化した屋根材太陽電池パネルの販売を開始している。角倉氏は「見栄えとしての意匠にすごくこだわっています。瓦一体型太陽電池は瓦屋根にピタっと納まります」と話す。

 2002年にはこの製品を発展させ、光が一部透過するガラス材を使った「シースルー太陽電池」を窓や屋根用として開発し販売開始。採光と発電の両方を可能にする製品を可能にした。

左が一般的な太陽光パネルを乗せた屋根。右がカネカの屋根材と一体化した太陽光パネルを利用した例。〔右の画像の出典〕カネカ
左がシースルー太陽電池を屋根に利用した施設。右が発電素材を、ガラスの上にスリット状に作成することで、採光と発電の両方を可能にしたシースルー太陽電池。〔出典〕カネカ

 2019年には家屋のみならず大型建築物向けの製品も開発。建物の外壁や窓と太陽光発電を一体化させた外装システム「T-Green Multi Solar※1」を大成建設と共同で開発した。

 最近の大型建造物は街との共生を意識して、太陽光発電を行っていることがはっきりとは分からないようにする傾向がある。T-Green Multi Solarではこの点を意識し、外壁材として一面を太陽電地パネルで覆い、窓材にはシースルー太陽電池を利用することで、太陽電池であることを感じさせない外観になっている。

※1「T-Green」は大成建設の登録商標

ビルの壁・窓向け太陽電池モジュール「T-Green Multi Solar」。壁用のソリッドタイプは表からは配線が見えない工夫がされており、窓用は従来のシースルー太陽電池を建材用に整形し扱いやすくしてある。〔写真提供〕大成建設
外装システムの事例(壁面と窓を太陽電池にし改築した大成建設横浜支店ビル、右下は改築前)。2024年、カネカは大成建設と合弁会社のG.G.Energyを立ち上げ、この外装システムの拡販を目指している。〔写真提供〕大成建設

 この他にも、カネカの太陽電池の事例には、国立競技場の天井材や「トヨタ・プリウスPHEV向けルーフ型太陽電池」などがある。

国立競技場の天井の先端、透明な部分にシースルー太陽電池が使われている(右の赤線の内側)。200枚近くの太陽電池が約40KWの発電力を有している(数値は独立行政法人 日本スポーツ振興センターの発表値による)
トヨタ・プリウスのルーフ型太陽電池の外観。太陽電池の電極を片面に集中するバックコンタクトという技術で、外から配線が一切見えないようにし、黒一色の屋根を可能にした