〈左〉NEDOの山崎光浩氏(左)と松原浩司氏(右)。(撮影:矢島幸紀)/〈右〉上がペロブスカイトの溶剤。下が溶剤をスポイトで塗り、100℃程度で熱して定着させる工程。〔出典〕国立研究開発法人 産業技術総合研究所のYouTubeチャンネルより。【提供】国立研究開発法人 産業技術総合研究

 地球温暖化対策として再生可能エネルギーの導入拡大が進む中、太陽光発電は世界的な太陽電池パネルの量産効果により、資源エネルギー庁の発表によれば「2020~2030年の10年間で10~20%以上のコストダウンが見られ、発電効率の上昇も見込まれる」など今後の期待が高い。しかも、ここにきて結晶シリコン一辺倒だった太陽電池素材に有機化合物やヨウ素からなる「ペロブスカイト」が登場。これまでの太陽電池にはない「曲がる、軽い」「安価に製造できる可能性が大きい」という特徴から大きな注目を浴びている。太陽光発電の拡大を目指す日本にとってペロブスカイト太陽電池はいかなる効果をもたらすのか。ペロブスカイト太陽電池の研究開発とビジネスの最前線を3回にわたってレポートする。第1回の今回は、研究開発マネジメント機関としてエネルギー分野などのイノベーション創出を後押しするNEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)にペロブスカイト太陽電池の可能性について聞いた。(第1回/全3回)

<連載ラインアップ>
■第1回 失われた太陽光発電世界シェアを取り戻せるか? NEDOが支援する「軽くて曲がる」次世代太陽電池の大きな可能性(本稿)
第2回 40年来の薄膜技術を活用、カネカが描く「ペロブスカイト太陽電池」が身近にある未来社会
第3回 ぺロブスカイト太陽電池で「どこでも発電所」実現へ 日揮が乗り出す次世代太陽電池ビジネスの勝算


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期待が高い再生可能エネルギー、その41%を太陽光発電でまかなう

山崎 光浩/NEDO 新エネルギー部 太陽光発電グループ 主任研究員

プロジェクトマネージャー(取材時) 2001年国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構入構。プロジェクト評価、経済産業省出向、国際部、欧州事務所を経て、2019年~2024年3月末まで新エネルギー部で太陽光発電の研究開発分野の事業を担当。2024年7月から同機構、事業統括部課長。

 脱炭素社会の実現に向けて再生可能エネルギー活用への期待は高い。日本の電力を作る1次エネルギー(太陽光や原子力、化石エネルギーなど)をどう利活用するかの中長期的な施策となる「第6次エネルギー基本計画」(2021年に策定され、3年置きに見直し)では、太陽光など再生可能エネルギーを2019年の18%から2030年には倍以上の38%にしたいと、積極的な利用が示唆されている。

 この目標について、NEDOの山崎光浩氏は「世界で2050年のカーボンニュートラルを達成しなければなりません。ですから、日本も第6次エネルギー基本計画における再生可能エネルギーの活用については、経済産業省を中心に野心的な目標を設定しています」と話す。

国内の電源構成。2019年から2030年に向けては再生可能エネルギーを38%まで増やす予定。〔出典〕資源エネルギー庁「2030年度におけるエネルギー需給の見通し」より、著者作図
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 再生可能エネルギーには太陽光、水力、風力、地熱などがあるが、太陽光はその発電設備の費用がここ10年で家庭用は半分以下、事業用は3分の1ほどに低下するなど普及に勢いがついている。そのため、第6次エネルギー基本計画でも再生可能エネルギーにおける太陽光発電への期待は高く、2030年時点の再生可能エネルギーの41%を太陽光でまかなう予定だ。

2030年の再生可能エネルギーは38%を計画。その41%を太陽光でまかなう予定。〔出典〕資源エネルギー庁「2030年度におけるエネルギー需給の見通し」より、著者作図
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