機械工具業界において上場企業中トップレベルの経常利益を上げつづけているのがトラスコ中山(本社・東京都港区)だ。同社にとって変革は常なるもの。デジタル・トランスフォーメーション(DX)も、企業の志を体現するための必然的な取り組みと捉えている。役員に話を聞くと、“定説の破壊”を是とする経営者が掲げた企業メッセージ「がんばれ!! 日本のモノづくり」を軸に同社の経営や企業活動の何もかもがまわっていることが見えてくる。

シリーズ「フォーカス 変革の舞台裏 ~トラスコ中山編~」ラインアップ
■「日本のモノづくり」を支援、トラスコ中山“定説の破壊”の方程式とは(本稿)
5秒で回答、トラスコ中山の“劇的時間短縮”AI見積システムが生まれるまで
「富山の置き薬」方式を製造現場に、生産効率を変えたトラスコ中山の新発想
必要なのは「異動」と「覚悟」、トラスコ中山のDXリーダーが語る組織変革の鍵


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「いつの時代も必要とされる企業」づくりが好業績へ

 トラスコ中山は、「プロツール」とよばれる、機械工具をはじめとするモノづくり現場で必要とされるあらゆる工業用副資材を販売する卸売業者。モノづくりのサプライチェーンにおいて、上流のメーカーから製品を仕入れ、下流の小売店などに販売している。

 機械工具を扱う上場商社のなかで、同社の経常利益は近年トップレベルでありつづける。2023年8月には、同年通期の経常利益(連結)を14%上方修正し、前期比20.9%増の182億2000万円になると予想した。端的にいえば、絶好調なのである。

 好調さの要因について、「輸入物価の低下」や「半導体不足の緩和」など景況感もあるが、それだけでなく「企業としての一貫した姿勢」を同社は強調する。「いつの時代もお客様や社会から必要とされる企業」を目指していることや、「顧客に最高の利便性を提供することが、結果として会社の成長につながる」と考えていることなどだ。

 もちろん企業は、社会のため顧客のためと言う。それが表層だけのものか、本質にあるものか。社外の者がそれを知るには、経営者の重ねてきた歩みや伝えられる姿にできるだけ迫るしかない。