独自のセラミック技術でグローバルに事業を展開する日本ガイシが、大がかりな企業変革を進めている。同社の自動車向け排ガス浄化装置用製品は世界の車の約半数に使われているが、「新車は全て電気自動車」時代が到来すると、需要は大きく減少することになる。市場環境の激変に備えて、同社は新たな理念とビジョン、2050年のありたい姿を策定。代表取締役副社長 技術統括の丹羽智明氏に、その実現への取り組みを聞いた。
DXをありたい姿に向かう推力に
――「NGKグループビジョン Road to 2050」で、2050年のありたい姿を定めました。それはどのような姿で、どのように実現するのでしょうか。
丹羽智明氏(以下敬称略) 当社は創立100周年の折りにNGKグループ理念を再定義し「社会に新しい価値を そして、幸せを」という私たちの使命をグローバル拠点の社員全員に共有しました。2年後の2021年には、理念を具現化するためのグループビジョンに「独自のセラミック技術でカーボンニュートラルとデジタル社会に貢献する」を2050年のありたい姿として掲げました。
この達成のためになすべきこととして取り組んでいるのが、「ESG経営」を中心と位置付け、既存事業での「収益力向上」、新規事業化を推進する「研究開発」と「商品開花」「DX推進」という5つの変革です。
研究開発と商品開花のために、10年で3000億円の研究開発費を投資していきます。2030年までに、この2つの変革を実現して新事業や新商品で1000億円以上を売り上げる目標を掲げています。
ありたい姿に向かう推力と位置付けるのが、DX推進です。2023年までをステージ1とし「デジタル活用の基盤づくり」のためにアナログデータのデジタル化を進めています。2025年までがステージ2で、DX経験を社内で水平展開します。2030年までがステージ3で、データとデジタル技術を活用した変革を達成します。
日本ガイシがこうした変革を進めていく背景には、事業環境の変化への危機感があるからです。「2035年以降の新車は全て電気自動車」という規制が進むと、当社が得意とする排ガス浄化用のセラミック製品の多くが必要でなくなります。自動車向け業務のピークアウトが見えてきた危機感が、会社全体として「変革しなければならない」「10年後ではなく今からやらないと間に合わない」という思いにつながりました。