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 少子高齢化や人材不足を背景に、またサステナビリティーや企業変革の観点から、退職者を「アルムナイ」(卒業生)と呼び、有力なパートナーとして関係構築に動く企業が増えている。アルムナイとの連携は企業にどんなメリットをもたらすのか、ネットワークづくりのポイントは何か。本連載では『アルムナイ 雇用を超えたつながりが生み出す新たな価値』(鈴木仁志、濱田麻里著/日本能率協会マネジメントセンター)から内容の一部を抜粋・再編集。先進事例として、住友商事の取り組みを取り上げる。

 今回は、アルムナイとの協業の成果をどう評価すべきか、同社の考え方を明らかにする。

事例 住友商事
アルムナイと共に価値を創造する
人的資本として存在感を増すアルムナイ・ネットワーク

アルムナイ 雇用を超えたつながりが生み出す新たな価値』(日本能率協会マネジメントセンター)

■ ネットワークの取り組みに対する社内外からの評価のあり方

──ネットワークがあることで実現した、アルムナイとのビジネス協業についても聞かせていただけますか。

柴田 アルムナイとの協業はこれまでも複数実現しています。例えばアルムナイが立ち上げた医療系のベンチャーとの共同サービス開発であったり、最近では、アルムナイと共同で中堅中小企業のDX推進を軸としたPEファンドを組成した事例もあります。人事では、アルムナイが提供するコーチングビジネスのパートナーになった事例もありますね。

 ただ、正直なところ、事務局でも全てを把握することは難しいですし、そもそも全てを把握しておく必要もないのではと感じています。もちろん、取り組みの成果としてオープンにできるものはどんどんオープンにしていきますが、成果を把握することが目的にすり替わってはいけません。

──おっしゃる通りですね。ただ、「全部把握する必要はない」と言い切ることのできる事務局の方は、なかなかいらっしゃいません。

柴田 どちらの企業でもおそらく、現場主導でそれなりに労力をかけて取り組みを実施しようとすると、どうしても「KPIを設定しなければいけない」という話になってくるのでしょう。そういう意味では、取り組みを始めた時期が早く、何をもって成果指標とするのかなど知見がない中で手探りでのスタートであったことが逆に良かったのかもしれません。