事業へのデジタル実装と、デジタル人材の育成を推進
――経歴と、双日に入社された経緯をお教えください。
荒川 大学卒業後、日本アイ・ビー・エムにシステムエンジニアとして入社。現場で、お客さまのシステムの設計、構築の支援をしていました。その後、マーケティング、営業やハードウェア、ソフトウェア、セキュリティサービス、AIやクラウドといったさまざまな製品、サービス、ソリューションを担当してきました。2014年に取締役、2015年からはデジタルセールス事業に加えて、初代CDO(チーフ・デジタル・オフィサー)の任を受け、日本アイ・ビー・エム自体のDXにもチャレンジしました。
例えばWeb、チャット、ビデオチャット等のデジタルツールを活用し、また、CRM、マーケティングオートメーション等のプロセス管理に基づいた営業活動を行っていました。当時は、デジタルツールを活用した営業は、世界でも最先端でしたね。また、この日本アイ・ビー・エム自らの取り組みを進行形としてお客さまにご紹介することによって、お客さまの営業DXにご活用いただくことにも取り組んでいました。
双日では、2021年10月に顧問としてスタート。働き始めてすぐに、次の10年を創るために社長をリーダーに全社一丸となってデジタルとポートフォリオの変革に取り組んでいることを理解しましたので、ぜひ主体的に関わりたいと強く思い、12月にCDOとして入社しました。
――双日が目指すデジタル戦略についてお教えください
荒川 双日は「中期経営計画2023 ~ Start of the Next Decade ~」の中で2030年に目指す姿として、“事業や人材を創造し続ける総合商社”と宣言しています。これをデジタル(データとテクノロジー)で実現することが双日のデジタル戦略そのものです。商社は、世の中のニーズにいち早く対応し、取り扱う事業やポートフォリオを変化させて価値を創ってきました。2030年に向けてさらにこれを強化・加速するためには、テクノロジーやデータの活用が必須です。
具体的には2つ注力しています。1つは現在の事業の中にデータやテクノロジーといったデジタルを実装して事業価値を上げていくValue up、Value Creationです。そしてもう1つは、これら事業価値を自ら創造できるデジタル人材の育成です。
――CDO室やDX推進委員会などについて詳しくお聞かせください。
荒川 DX推進委員会を軸に会社のデジタル変革に取り組んでいます。社長が委員長をしています。個別案件のフォローアップを中心に、経営陣や営業本部長とともに活発に議論を交わす場となっています。
CDO室の機能・役割は、営業部門とともにデジタルを活用しビジネスモデルを共創すること、人事部と共にデジタル人材育成に向けた教育プログラムの開発です。
各営業本部長とは2カ月に一度ミーティングを開催して、新しく手掛ける事業に関してのデジタル実装の可能性を議論しています。データとデジタルテクノロジーを駆使して、ビジネスアイデアに一層の付加価値を与え、営業部門と共に事業化を目指す取り組みです。例えば、バイオマス由来の再生可能プラスチックのトレーサビリティを高める取り組みなどがあります。