丸紅グループが実施した大規模な人事制度改革は、2019年からの変革の3年間を経て戦略実践の3年間に突入している。既存の枠組みを超えることをスローガンに掲げ、斬新な人事制度を実質1年で導入した実態、新たな価値をイノベーションするために仕掛けた「人財×時間×仕掛け」の中身とはどのようなものだろうか。
以下では、人事部長として変革をけん引し、2023年からは新設されたCHRO(Chief Human Resource Officer)として人財戦略を担う鹿島浩二氏と、元ロート取締役(CHRO)の髙倉千春氏が、人事という共通の視点から人財戦略を追求する対談の骨子をお届けする。
最高益を更新した丸紅が抱いた大いなる危機感とはなにか
髙倉千春氏(以下、髙倉) 人事部長として、変革のジャーニーをリードされてきた鹿島さんですが、2018年の人事制度大改革では、丸紅という船の航行の先に何を見据えていましたか。
鹿島浩二氏(以下、鹿島) 2018年、当社では「人財」×「仕掛け×「時間」という大きな仕掛けに取り組みました。実は、この時、当社は史上最高益を更新しています。しかし、時代の波が大きく、このままでは飲み込まれてしまう、という危機感がありました。そこで、「既存の枠組みを超える」というスローガンを立て、会社の中を変えていこうと考えたのです。
まずは「丸紅グループの在り姿」を制定しました。1つ目のポイントは、時代が求める社会課題を先取りし、タテの進化とヨコの拡張により、ソリューションを創出するということです。例えば、「エネルギーが欲しいけれど、実は水も欲しい」という国もあるでしょう。そういった社会課題を解決することで利益を得るのならば、社内のリソースをきちんと使うためにタテとヨコとが連携することこそが、商社のあるべき姿だと考えました。
2つ目のポイントは、丸紅グループを1つのプラットフォームとして捉えたことです。世の中は複雑化が進み、一社だけでは解決が難しいこともあります。そのときに、社員の志や社内外の知を縦横無尽にクロスさせて新たな価値を創造し、いかに社会課題を解決していくかということを掲げました。