
この1、2年で世間の認知が急速に高まり、ビジネスでの活用も進みつつある生成AI。数年前から議論になっていた「AIは人間の仕事を奪うのか」という懸念がついに現実になり始めたともいえる。本稿では、『生成AI・30の論点 2025-2026』(城田真琴著/日経BP 日本経済新聞出版)から、内容の一部を抜粋・再編集。前述の懸念への回答と合わせて、生成AI活用によって変貌しつつあるビジネスの在り方から、環境問題への影響まで、多角的な視点で解説していく。
複数タスクを自律的に遂行し、「AIのキラーファンクション」とも呼ばれる「AIエージェント」。人間の業務代行はどこまで進んでいるのか?
AIエージェントは人間の代わりになるか

LLM(大規模言語モデル)を基盤とするアプリケーションとして「AIエージェント」が注目を集めている。OpenAIのサム・アルトマンCEOは2024年5月、AIエージェントを「AIのキラーファンクション(機能)」と評したほどだ。 一部業務では、すでに人間を代替するケースも報告されている。
■ AIエージェントとは何か
AIエージェントは、ユーザーから与えられた目標をもとに、複数のタスクを自律的に計画・実行するAIシステムである。これには、LLMを活用した推論や分析、インターネットや外部アプリケーションとのやり取り、さらにはメモリー機能の利用が含まれる。たとえば、タスクを段階的に分解し、外部のデータやAPI(Application Programming Interface)にアクセスして目標を達成することができる。
AIエージェントは単にユーザーの質問に答えるだけでなく、複雑な問題を解決するためにタスクを自動的に生成し、順次実行する能力を持つ。このため、単なるチャットボットとは一線を画し、より高度な自律性を持つ。また、将来的なAGI(汎用人工知能)実現に向けた重要なステップとして位置づけられている。