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 この1、2年で世間の認知が急速に高まり、ビジネスでの活用も進みつつある生成AI。数年前から議論になっていた「AIは人間の仕事を奪うのか」という懸念がついに現実になり始めたともいえる。本稿では、『生成AI・30の論点 2025-2026』(城田真琴著/日経BP 日本経済新聞出版)から、内容の一部を抜粋・再編集。前述の懸念への回答と合わせて、生成AI活用によって変貌しつつあるビジネスの在り方から、環境問題への影響まで、多角的な視点で解説していく。

 生成AI活用の広がりには負の側面もある。電力消費を急増させ、環境負荷を悪化させている現状に、企業はどう対処すべきか?

生成AIによる環境への負荷にどう対処するか

生成AI・30の論点 2025-2026』(日経BP 日本経済新聞出版)

 生成AIの急速な発展は、私たちの生活や仕事のあり方に大きな変化をもたらしている。

 特に、OpenAIのGPTシリーズに代表される大規模言語モデルや、DALL-E、MidJourneyといった画像生成AIはその驚異的な能力で世界中の注目を集めている。しかし、この技術革新の陰には、環境への負荷という見過ごせない課題が存在している。

■ データセンターの電力消費と生成AIの影響

 生成AIモデルの開発や運用には膨大な計算リソースが必要とされる。これらの計算処理は主に大規模データセンターで行われるが、そのエネルギー消費量は無視できないレベルに達している。データセンター産業は、世界全体の温室効果ガス(GHG)排出量の2~3%を占めており、これは航空業界と同等の規模である。生成AIの利用が拡大するにつれて、この割合もさらに増加すると予想される。

 データセンターでは、コンピュータ機器の運用や冷却システムに多大なエネルギーが必要とされている。特に生成AIは、従来のクラウドサービスに比べてはるかに多くの計算能力を必要とし、その結果、使用される電力も膨大となる。

 現在、米国では全電力消費の2.8%、デンマークでは約7%がデータセンターによるものと推定されている。しかし、生成AIの急速な普及に伴い、データセンターの電力消費は今後さらに増加し、電力インフラへの負担もいっそう大きくなると予想されている。