
近年のアクティビストの活発な動きに代表されるように、企業支配権が市場原理の下で売買される「企業支配権市場」に注目が集まっている。本連載では『アクティビストと企業支配権市場 日本企業に変革と再編を迫るマーケットの猛威』(大熊将八著/金融財政事情研究会)から、内容の一部を抜粋・再編集。上場企業がアクティビストと向き合うための実践的対応法を考えていく。
今回は、市場や投資家との対話という点から、今後より重要性を増していくことが予想されるCFOや社外取締役などの役割について考察する。
企業価値向上プランと「資本コストを意識した経営」

経営を監督する立場にある社外取締役についても、投資家との対話に積極的に参加することが求められる。
とりわけアクティビストは、投資先企業の社外取締役に対してアプローチを行い、買収提案に関するプロセスや執行に関する評価について厳しく指摘を行うケースが増えており、アクティビストとしっかりと対話できる社外取締役の重要性は増している。
資本市場を知悉した社外取締役がいることで、社外取締役の能力と独立性、監督機能などについてアクティビストからの信頼を勝ち取ることができ、結果として活動を鎮静化させることに成功したケースもある。
株主との対話に消極的あるいは資本市場と向き合うため知見と能力に欠けているとみなされると、株主提案を通じて新たな社外取締役の選任が図られる可能性が高まるわけである。アクティビスト以外の投資家としても、株主の利益を代表し経営を監督できる立場にある社外取締役は重要であり、対話を通じてその資質を示す・引き上げることは肝要である。
CFO(Chief Financial Officer)の役割もいま一度アップデートされる必要がある。伝統的なCFOの役割としては2段階あり、1段階目がいわゆる管理部長・経理部長として企業を財務面から管理するというもの。2段階目は、主に財務の観点から経営戦略の策定そのものに携わり、それに基づき機動的な資金調達を行うというものだ。
日本ではこれまで前者にとどまるケースが多かったが、スタートアップから上場する企業などは投資銀行やPEファンドのバックグラウンドを有する後者のCFOを擁するケースも増えてきている。