日本で二酸化炭素(CO2)排出量取引の環境整備が進み、取引参加を表明する企業が増えている。一方で、地方自治体と協力しCO2を削減した価値(J-クレジット)を都市ガスと組み合わせて商品化するガス会社が増えてきたという。排出量取引は都市ガス業界にとってどのようなメリットがあるのだろうか。
「GX(グリーントランスフォーメーション)リーグ」や「カーボン・クレジット市場」など、日本での取引制度の枠組みも踏まえて、ガスエネルギー新聞常務取締役編集長の大坪信剛氏に聞いた。
<連載ラインアップ>
■第1回 注目技術「e-メタン」で脱炭素社会をどう創る? ガスエネルギー新聞編集長に聞く、都市ガス業界の最新動向
■第2回 「一足飛びに排出ゼロ」はどこまで現実的か? ガスエネルギー新聞編集長に聞く、日本の電源構成の最適解
■第3回 温室効果はCO2の28倍、排出抑制すべきメタンガスが「エネルギー源」として注目される理由
■第4回 AI、RPAをサプライチェーンで大活用 東京ガス、大阪ガス、北海道ガスが進めるDX最新動向
■第5回 700社超が「GXリーグ」に参加、都市ガス業界が「カーボン・クレジット市場」に感じた新しい価値とは?(本稿)
日本のカーボン・クレジット市場が緩やかに始動
──2026年度からの二酸化炭素(CO2)排出量取引の本格導入に向けて、日本の市場環境の整備が進んでいますね。
大坪信剛氏(以下・敬称略) 排出量取引はご存じの通り、脱炭素への取り組みの一つで、あらかじめ企業ごとに排出枠を決めておき、排出量がそれを上回ってしまった企業は、排出枠が余っている企業から買い取る仕組みです。
一般に脱炭素の取り組みは、企業にとってコスト負担を強いるものですが、このような取引市場を生み出すことで企業に新たなビジネスチャンスを提供する狙いがあります。
欧州諸国は早くからCO2削減に向けて意欲的な目標を掲げてきましたが、期待通りには進んでいません。このため、企業に対して排出量取引への参加を義務づけたり、削減目標に達しなかった企業にペナルティを与えたりするなど、強化策をとっています。一方、民間では既にこれをビジネスと捉え事業創出が進んでいます。
欧州の排出量取引が先行している背景にはそうした事情があるのですが、この動きは世界的な潮流となっており、日本政府もこの流れを踏まえて排出量取引に積極的に取り組んでいます。ただ、企業に対して急激に強い規制や罰則を課してしまうと、産業活動が停滞する恐れもあるため、段階的な導入を進めているところです。
「GX(グリーントランスフォーメーション)リーグ」や「カーボン・クレジット市場」の創設なども、そうした取り組みの一環です。
──GXリーグとカーボン・クレジット市場は、それぞれどのような仕組みなのでしょうか。