デジタイゼーション、デジタライゼーションを経てデジタル化の最終目標となるデジタルトランスフォーメーション(DX)。多くの企業にとって、そこへ到達するためのルート、各プロセスで求められる施策を把握できれば、より戦略的に、そして着実に変革を推し進められるはずだ。
本連載では、『世界のDXはどこまで進んでいるか』(新潮新書)の著者・雨宮寛二氏が、国内の先進企業の事例を中心に、時に海外の事例も交えながら、ビジネスのデジタル化とDXの最前線について解説する。第10回は、神奈川県鶴巻温泉の老舗旅館「陣屋」のデジタルを大活用した経営再建を紹介する。
「世界競争力ランキング2024」で日本は38位
スイスのビジネススクールである国際経営研究所(IMD)は、1989年以来毎年、人口2000万人以上の67カ国・地域を対象に世界競争力ランキングを発表しています。
本調査は、4つのカテゴリー(合計20項目)である「経済パフォーマンス」「政府の効率性」「ビジネスの効率性」「インフラストラクチャ」において336の指標でスコア付けしており、評価基準のうち3分の2が測定可能な数値データを、また、3分の1が企業幹部などの調査回答をもとにして算出しています。
2024年6月に発表された「世界競争力ランキング2024」で、日本は38位と昨年よりも順位を3つ落としており、4つのカテゴリーの内訳では、経済パフォーマンスが21位(55.15ポイント)、政府の効率性が42位(42.34ポイント)、ビジネスの効率性が51位(30.83ポイント)、インフラストラクチャが23位(63.22ポイント)という結果になっています。
この結果からDXの視座で特に懸念されるのは、ビジネスの効率性です。2020年からの5年間で見ても、55位、48位、51位、47位、51位と、ほぼ50位前後で推移しており、低迷した状態にあります。
このように低迷する要因はどこにあるのでしょうか。