陣屋の調理場には顧客情報の変更などが一目で分かるように大型のディスプレーが置かれている(2017年11月)
写真提供:共同通信

 デジタイゼーション、デジタライゼーションを経てデジタル化の最終目標となるデジタルトランスフォーメーション(DX)。多くの企業にとって、そこへ到達するためのルート、各プロセスで求められる施策を把握できれば、より戦略的に、そして着実に変革を推し進められるはずだ。

 本連載では、『世界のDXはどこまで進んでいるか』(新潮新書)の著者・雨宮寛二氏が、国内の先進企業の事例を中心に、時に海外の事例も交えながら、ビジネスのデジタル化とDXの最前線について解説する。第10回は、神奈川県鶴巻温泉の老舗旅館「陣屋」のデジタルを大活用した経営再建を紹介する。

連載
雨宮寛二 日本と世界のDXはどこまで進んでいるか

『世界のDXはどこまで進んでいるか』(新潮新書)の著者・雨宮寛二氏が、国内の先進企業の事例を中心に、時に海外の事例も交えながら、ビジネスのデジタル化とDXの最前線について解説する。

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「世界競争力ランキング2024」で日本は38位

 スイスのビジネススクールである国際経営研究所(IMD)は、1989年以来毎年、人口2000万人以上の67カ国・地域を対象に世界競争力ランキングを発表しています。

 本調査は、4つのカテゴリー(合計20項目)である「経済パフォーマンス」「政府の効率性」「ビジネスの効率性」「インフラストラクチャ」において336の指標でスコア付けしており、評価基準のうち3分の2が測定可能な数値データを、また、3分の1が企業幹部などの調査回答をもとにして算出しています。

 2024年6月に発表された「世界競争力ランキング2024」で、日本は38位と昨年よりも順位を3つ落としており、4つのカテゴリーの内訳では、経済パフォーマンスが21位(55.15ポイント)、政府の効率性が42位(42.34ポイント)、ビジネスの効率性が51位(30.83ポイント)、インフラストラクチャが23位(63.22ポイント)という結果になっています。

 この結果からDXの視座で特に懸念されるのは、ビジネスの効率性です。2020年からの5年間で見ても、55位、48位、51位、47位、51位と、ほぼ50位前後で推移しており、低迷した状態にあります。

 このように低迷する要因はどこにあるのでしょうか。