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経営変革の切り札とされるDX。多くの日本企業が推進に取り組むが、「デジタル化」や「カイゼン」にとどまるケースが少なくない。本連載では、『まやかしDXとの決別! 生成AI時代を勝ち抜く真のデジタル事業変革』(横山浩実著/日本経済新聞出版)から内容の一部を抜粋、再編集。DXを真の事業変革につなげる要諦を考察する。
今回は、事業変革のゴール・目的を「あるべき姿」として定める際のポイントを「4つの類型」から解説する。
「あるべき姿」に共感し、ビジネスモデルを描く
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■ DX成功企業が定める「あるべき姿」の類型
企業が将来にわたり市場で競争力を持ち続けるためには、各種事業を通じてビジネス価値、すなわち財務価値、組織価値、顧客価値を高められるようにする必要がある。
DXはこれらビジネス価値獲得のために行うものであり、単なるシステムの刷新とは厳然と区別して考えるべきだ。このことから、DXを検討する際には、事業変革のゴール・目的を「あるべき姿」として描くことから始める必要がある。
DXの「あるべき姿」は、類型化して考えると頭を整理しやすい。どこまで経営革新を行うのかを尺度として「対象とするバリューチェーン・ビジネスプロセスの広さ」と「製品・サービスの変革度」により四つに分類できる。
DXを成功させるには、この類型の特性および自社の現状を踏まえて「あるべき姿」を描くことが重要となる。以下では四つのDXの類型(図表2-1)について、あるべき姿はどのようなものが考えられるか、事例を挙げて簡単に触れておこう。