
経営変革の切り札とされるDX。多くの日本企業が推進に取り組むが、「デジタル化」や「カイゼン」にとどまるケースが少なくない。本連載では、『まやかしDXとの決別! 生成AI時代を勝ち抜く真のデジタル事業変革』(横山浩実著/日本経済新聞出版)から内容の一部を抜粋、再編集。DXを真の事業変革につなげる要諦を考察する。
DXがもたらす果実の1つである「合理的な判断・意思決定」により、どのようなビジネス価値をいかに獲得すべきか、その方法を解説する。
ビジネス価値1――合理的な判断・意思決定(データ駆動)

■ 合理的な判断・意思決定(データ駆動)で生み出せるビジネス価値
企業はデータ駆動の判断と意思決定により、過去を活かし、将来のリスクを軽減させ、勝ち筋を見極める形で、企業成長を果たすことができる。
IPAの調査(DX動向2024)の結果においても、DXの成果が出ている企業でのデータの利活用は70%を超え、DXの成果が出ていない企業の回答と比較して30%以上高いことが示されているように、データの活用がビジネス価値の源泉になることに異論を唱える者はいないだろう。
合理的な判断・意思決定(データ駆動)で生み出せるビジネス価値は、経営の質向上、売上成長、そしてコスト削減に分解できる。
① 経営の質の向上
経営の質の向上とは、経営情報を可視化し、経営言語を共通化し、リアルタイムで共有されたデータに基づいて経営を行うことを指す。経営の質の向上には、データの特性である「客観性・公平性」および「再現性・予見性」を活かすことがポイントだ。
客観性と公平性により、データは感情や偏見に左右されず、誰が見ても納得のいく結論を導ける。その上で、再現性と予見性を活用し、リアルタイムで各種応用・分析を行うことで、根拠に基づく合理的な判断・合意を図る。