
経営変革の切り札とされるDX。多くの日本企業が推進に取り組むが、「デジタル化」や「カイゼン」にとどまるケースが少なくない。本連載では、『まやかしDXとの決別! 生成AI時代を勝ち抜く真のデジタル事業変革』(横山浩実著/日本経済新聞出版)から内容の一部を抜粋、再編集。DXを真の事業変革につなげる要諦を考察する。
今回は、DXのゴールである「あるべき姿」を設定する際のポイントを、「ビジネス価値」と「実現可能性」という観点から解説する。
DXのゴールはビジネス価値創出――ITシステム導入は終わりの始まり

■ 意欲的で身の丈に合った事業変革範囲の合意―対象事業・業務範囲定義
第2章で述べた通り、DXのゴールである「あるべき姿」は、単なる業務効率化ではなく、ビジネス価値を創出するものにすべきだ。
真のDXを実現するためには、事業部自ら「あるべき姿」を目指して、どこまで事業変革を行うべきかのスコープ(範囲)を明確に定め、ITシステムの導入をその手段として位置付ける必要がある。
事業変革のスコープは、企業活動をフロントサービス、バックオフィス、コーポレートマネジメントなどの機能と業務・役割に分解する形で「事業・業務範囲」を定義し(図表3-1)、それぞれの「事業・業務範囲」に対してDXが創出する「ビジネス価値」と「実現可能性」を評価することで優先度を明確にするとよい。