
「経営人事」という言葉を聞いて、皆さんはどういうイメージを持つでしょうか。
経営における人事の役割について、あるいは経営者の選定のようなマネジメント層の人事を思い浮かべる人もいるかもしれません。最近よく聞くCHRO(最高人事責任者)という言葉を想起した人もいるでしょう。
私は「経営に資する人事」という意味で経営人事という言葉を使っています。
「経営に資する人事なんて当たり前だ」。そう感じる人は少なくないと思います。もちろんその通りです。会社という組織の一部である以上、人事部、あるいは人事関連の組織が会社のかじ取りを決める「経営」をサポートするのは当然です。
ところが、日本では長い間、人事と経営は必ずしもシンクロしていませんでした。経営戦略とは関係のないところで、評価や採用といった人事活動を行ってきたということです。
経営と人事がシンクロし始めた背景
1990年代までの日本企業は、年功序列や終身雇用、新卒一括採用など独自の経営慣行をとってきました。いわゆる日本的経営です。人材の採用と育成についても、毎年、新入社員を採用し、OJT(オンザジョブトレーニング)で鍛え、人事ローテーションを通してゼネラリストを育てるという企業がほとんどでした。
当時の企業に経営戦略がどれほどあったのかという疑問もありますが、経営戦略や事業戦略と人事戦略がほとんどシンクロしていなかったのは間違いありません。「10年後に必要になる人材は?」と社長に聞かれて、社長が満足する回答ができる人事部長は少なかったと思います。
もっとも、失われた30年の中、旧態依然としていた日本企業も徐々に変化していきました。中途採用はもはや当たり前。職務の内容や責任を明確に定義したジョブ型雇用の浸透など、働き方も多様化しています。日本企業の象徴だった独自の雇用慣行は、この20年でだいぶ流動化しました。
経営と別の動きをしていた人事も、ここに来てようやく変わりつつあります。
ここ数年、経営における人事領域の重要性が指摘されるようになりました。その一番の理由は、人にまつわるテーマが経営の最重要課題になったということに尽きると思います。