建築業の職人の立場に立って、「どうしたら仕事を探せるか、どうしたらモノづくりに専念できるか、どうしたら稼げるようになるか」を考えたら、それらの課題を解決するには、人手に頼らなくていいところは全てIT化するという結論に行きつく。職人の仕事を人気業種にするために、クラフトバンクの韓英志社長が立ち上げたサービスとは。

世界から評価される、職人の1億円プレイヤーをつくりたい

 住宅を建てるとき、ハウスメーカーなどに依頼するのが一般的だが、そのハウスメーカーは多くの協力会社と一緒に一つの建物を作る。内装会社であったり、電気工事会社であったり、水回りの会社であったり、それぞれ専門分野ごとに細分化されていて、たくさんの会社の協力なくして完成させることはできない。

 ところが、専門技術を持った職人がどんどん減っているというのが現状だ。このままいったら、家を建てられなくなる。そう危機感を持った韓英志社長は、この業界が魅力あるものになるためにどうしたらいいかを考えた。

 手掛けたのは、工事会社の施工力をデータベースに蓄積したプラットフォーム「クラフトバンク」である。これで、元請けとなる発注会社が容易に協力会社を探すことができるようになる。「職人さんの情報を集めて、発注企業とのBtoBマッチングサービスをつくろう。営業代行して、世界でも評価される1億円プレイヤーをつくりたいんです」と、韓社長は立ち上がった。

 韓社長は京都大学 建築学科卒業後、東京大学大学院 建築学専攻を修了。建築を専門に学び、生業にしようと大学院まで学んだが、「自分には建築設計のセンスはない」(韓社長)と見切りをつけ、2005年にリクルートに入社。ちょうどスマホが出てきたばかりの時代で住宅情報事業(現在のSUUMO)を志願してキャリアをスタートさせた。

「SUUMOで営業から企画までを計4年経験し、その後は本社の経営企画を経てグローバル投資・事業開発の責任者として海外買収を仕掛けました。欧州版『食べログ』を買収して座席管理のSaaSプロダクトをグローバル展開し16カ国に展開しました。」(韓社長)

 37歳の時、「グローバルIT経営を通じて学んだことを古巣の建設業で生かそう」と決めた。2017年に退社。2018年1月に創業18年の内装工事の元請会社「ユニオンテック株式会社」の株式を取得して経営参画し建設工事のデジタル化に着手した。