アスクルのDXを推進してきた宮澤典友氏

 アスクルは「明日届ける」というビジネスモデルで1993年に創業して以来成長を続け、昨年度は売上高、営業利益とも過去最高の業績を記録した。コロナ禍にあってEC業界全体が拡大しているという追い風を受けていることだけが好調の要因ではない。データを分析して本当に衛生用品を必要とするユーザーを特定して提供するなど、データとテクノロジーを駆使したDXへの取り組みが成果に結び付いているのだ。同社のDXに対する考え方と具体策について紹介する。

自らを「破壊する」ことで成長し続けてきた

 業績を伸ばし続けてきた同社だが、実はこれまでに何度かビジネスモデルを転換しながら成長力を維持してきた。執行役員CDXO(チーフ・デジタルトランスフォーメーション・オフィサー ※役職は取材当時)の宮澤典友氏は「キーワードは“セルフディスラプション(自己破壊)”です」と話す。掲げてきたビジネスモデルを自ら否定することで、次のステージへと駆け上がってきたのだ。

 最初のディスラプションは2003年9月の「アスクルアリーナ」サービスの開始である。もともと中小企業に大企業並みのサービスを利用してもらうことを目的にスタートした同社だったが、さらなる成長のために中堅・大企業向けに購買管理サービスやボリュームディスカウントを提供するようになった。

 2つ目は2010年ごろのECサイトでの利用拡大に対応した取扱商材の拡大だ。「明日届かなくても良いから、当社で扱ってほしいという要望に応えたものです。今取り扱っている950万アイテムのほとんどは明日届かないものになっています」と宮澤氏。「明日届く」というビジネスモデルを社名に掲げた同社にとってまさに自己破壊だった。

「これまで約10年に一度のペースでセルフディスラプションをしてきました。次のディスラプションが今、進行しています。それがDXです。創業時から大切にしてきたデータをさらに活用して新たなビジネスモデルを構築しようとしています」と宮澤氏はDXの位置付けを語る。