大手メーカーの専属産業医を約10年間務める傍ら、総合病院の心療内科にて定期外来診療に従事してきた産業医の小島玲子氏。約8年前から丸井グループの産業医として、経営陣と働き方やあるべき企業文化について対話してきた。2021年には同グループの取締役CWO(Chief Well-being Officer)に就任し、ウェルネス推進部長としてウェルビーイング経営を支えている。「コロナ禍で働く」ということについて、ウェルネスに関する取り組みについてお聞きした。
※本コンテンツは、2021年9月1日に開催されたJBpress主催「第7回 ワークスタイル改革フォーラム」の特別講演Ⅱ「丸井グループのWell-being経営 ~健康経営から、社会のしあわせへ~」の内容を採録したものです。
全ての人が今よりも活き活きすることを目指す
BIGLOBEが2020年に実施した、20~60代の男女1000人を対象とした調査によると、コロナ禍で物事の価値観や意識に変化があった人は約7割を超え、また別の、2020年のワークポートの調査では、コロナ禍で働くことに対する価値観に変化があった人は7割弱に上る。
「仕事をする時間は1日の1/3を占めています。人生100年時代、仕事を通じて充実した時間を過ごせるかどうかは、その人の人生の充実や幸福度に大きく関わってきます。従来の働き方では、上司の命令に従い、やらされ感のもとで働くことが普通でした。ですが、変化の大きな時代において新たな価値を生み出していくには、社員が楽しさや充実感を得ながら自ら考え、行動する主体的な企業文化をつくることが必要です」
丸井グループでは、「すべての人が『しあわせ』を感じられるインクルーシブで豊かな社会を共に創る」を企業ミッションに掲げている。この実現のために、社員一人ひとりに対し、個の主体性を高め、自主性を尊重することに注力してきた。それを一言で表すと『手挙げの文化』の推進だ。
「私が所管する健康、ウェルネスの取り組みに関しても、社員の自主性を促すことを推進してきました。一般的に健康経営というと、メタボやメンタル不調の人が普通に働けるようにするなどの疾病予防のことを指すイメージがありますが、丸井グループでは、全ての人が今よりも活き活きすることを目指しています」
下図のように、丸井グループでは時代ごとの課題に応じて、「健康」、「ウェルネス」とキーワードを変えてきた。疾病予防というイメージを拭い、全ての人が今よりも活き活きすることを目指すために、「ウェルネス経営」という言葉を使いはじめたのは、社員からの提案によるものだ。
さらに2021年から「ウェルビーイング経営」と打ち出したのは、健康経営の延長ではなく事業全体を通じて、経営の中心軸にサステナビリティとウェルビーイングを据えたためだという。世の中をウェルビーイングにしていくという目標は、2022年度からの新中期経営計画にも明記されている。