星野リゾートの星野佳路代表
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 自社の課題に正面から向き合い、事業を再建・成長へと導いた一流の経営者たちは、何を羅針盤とし、どのように組織をまとめ上げ、目標を達成したのか。経済ニュース番組の人気コーナー「モーサテ塾」を書籍化した『鉄人たちの仕事の哲学』(小林洋達著/かんき出版)から一部を抜粋。日本を代表する経営者3人の思考法や信念に迫る。

「教科書通りの経営」を実践し、成果を上げ続ける星野リゾート代表の星野佳路氏。成功の秘密は、理論が現場で機能する組織文化の醸成にあった。

星野流「科学的経営」

鉄人たちの仕事の哲学』(かんき出版)

■ 人を信じず、仕組みを信じる

――星野さんの経営で一番興味深いのは、「社員の正しい判断を促す」というところです。星野さんは、以前に別の番組の取材で、「人を信じて任せると、その人たちはいずれ自分で楽しく感じて、動き出す」と仰っていました。

 一方で、教科書通りの経営を掲げているわけですから、採用した教科書をスタッフにちゃんと理解してもらい、その通りにやってもらうという厳格さもあるわけです。教科書通りにやる厳しさと、「任せれば動き出す」みたいな自由さのバランスについて、星野さんはどのように考えていますか?

星野 その番組では「任せれば動き出す」とは言いましたが、信じてはいないんですよ、私は。信じたから任せているわけではありません

 フラットな組織文化を目指しているから、スタッフには意思決定に参加する自由度を与えているのです。意思決定に参加する自由度があると、人は必ず動き出します。これは、ケン・ブランチャード理論の根本なので、私は人が動き出すことは信じていますが、動き出した人が正しい判断をするとは限りません。

 動き出した人の判断を信じることはリスクであり、私は誰も信じていません。だからこそ、私も含めてすべてのメンバーに教科書が必要なのです。みんなに教科書の内容を知ってもらい、個々のスタッフの判断能力を高めていくことが重要です。