自治体の働き方改革は、コロナ禍で一気に重要度が増した。効率化だけではなく、登庁職員を減らしてサービスを継続する新たな仕組みの構築が急がれる。大阪府守口市は、働き方改革にDXを積極的に取り入れる自治体の一つだ。2021年10月末から提供を開始した”AIチャットボット”は、市民の新たな問い合わせ手段として支持され、利用数は月間約2万件近くにも上る(2022年3月時点)。そして、さらなるサービス向上を目指し”AI自動電話応答システム”の実証実験へ踏み出したのだ。同市のDX化による具体的な成果や、どのように構築したかについて、守口市担当者へ話を聞いた。
市民サービス向上と庁内業務効率化は表裏一体
大阪市の北東に隣接する守口市は、2021年に”第3次もりぐち改革ビジョン(案)”を策定した。基本的な考えとして、市民サービスの向上とICTの活用推進を盛り込み、DX化へ前向きに取り組む姿勢を提示した。組織面でも、従来の情報システムの管理部門とは独立した“デジタル戦略課”を立ち上げ、行政のデジタル化のテーマを見つけ、実装する役割を明確にした。
DX化には2つの方向性がある。一つは「市民サービスの向上」。もう一つは「市役所業務のデジタル化で、働き方改革を推進する」ことだ。市民の利便性が上がる行政サービスは、それを支える庁内職員の負担を減らす。結果的に働き方改革が進む好循環が生まれると考えられている。この2つは、表裏一体なのだ。
分かりやすい例が、住民からの問い合わせ対応だ。”電話がつながらない”、”返答に時間を要する”、”指定時間内のみの対応”など、住民への負担は想像以上に大きい。そして、対応に追われる職員も多くの時間を費やしている。複数の課を横断する手続きも多く、何人もの担当者が引き継いで対応することもあった。
総務省「自治体戦略2040構想研究会」 によると、人口減少の影響から、2040年には今の半数の職員で自治体を支える必要があるとされている。こうした変化に備え、職員への負担は全方面からの改善が急務とされている。守口市では、この問い合わせ対応の効率化は大きな働き方改革につながると考え、2021年10月からオンライン上で行政サービス案内を行う”AIチャットボット”のサービス提供を開始した。持続可能な形を早期に構築することが求められている中で、守口市の問い合わせ対応のDX化は、大きな成果を生んでいる。