広島県は、ものづくりにおいて強みを発揮する一方、デジタル化やサービス化では後れを取っていた。それが、2018年にDXに向けて大きくかじを切って以来、産業から暮らし、地域、行政といった全ての分野にDXを広げるべくさまざまな施策を講じ、成果を生んできた。「まずやってみる」という挑戦の姿勢を貫いてきた県知事の湯﨑英彦氏に、その全貌を解説してもらった。
※本コンテンツは、2022年2月17日に開催されたJBpress主催「第3回 公共DXフォーラム」の特別講演Ⅲ「実践!!広島型アジャイルDX~広島県の挑戦~」の内容を採録したものです。
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DX推進へ。広島県のビジョンとは
広島県はこれまで、自動車や船舶など輸送用機械を中心に製造業を基幹産業として安定的に成長してきた。しかし、その成功体験が足かせになり、デジタル化、グローバル化といった変革への対応が滞ってきた面もあるという。広島県知事の湯﨑氏は、近年の広島県の危機感を語る。
「DXの潮流が加速し、そこにAI、ビッグデータ、5Gといった技術革新も加わって、デジタルがバリューチェーン全体を変えつつあります。デジタルを前提にしていかなければ、広島県のものづくりも立ち行かなくなります。大きな方向転換が必要だと考え、DX推進にかじを切りました」
そこで2018年、広島県は「イノベーション立県」というコンセプトを掲げて、大きく2つの取り組みを始めた。産学官で連携したものづくりのデジタル化、そしてデジタル技術を活用したさまざまな実証プロジェクト「ひろしまサンドボックス」だ。
さらにDXを産業だけではなく全ての分野に広げるために、2019年には全庁を横断するDX推進本部を設置。2020年には県・官・民で構成するDX推進コミュニティを創設、さらに、今後10年間を見据える「安心・誇り・挑戦ひろしまビジョン」という総合計画を策定した。
「県民一人一人が安心の土台と誇りにより、夢や希望に挑戦できる社会を目指すという計画です。子育てから環境まで17の施策があり、これらを貫く3つの柱が『ひろしまブランド』の強化、人材育成、そしてDXの推進です」