15年後に生き残れるのは、どのような自動車メーカーなのか? 脱炭素化、AI普及など、世界が「ニューノーマル」(新常態)に突入し、ガソリンエンジン車主体の安定した収益構造を維持できなくなった企業が考えるべき新たな戦略とは? シティグループ証券などで自動車産業のアナリストを長年務めてきた松島憲之氏が、産業構造の大転換、そして日本と世界の自動車メーカーの、生き残りをかけた最新のビジネスモデルや技術戦略を解説する。
第13回は、ホンダと日産の経営統合についてさまざまな角度から読み解く。両社の抱える経営課題、株式市場の反応、経営統合を成功させるための現実的な戦略とは?
日産とホンダとの経営統合の背景
前回記事の公開当日(12月18日)に日産自動車(日産)と本田技研工業(ホンダ)との経営統合のニュースが流れ、両社は経営統合の本格的な協議を開始することを12月23日に発表した。前回も2社について生き残りのための処方箋を少し述べたが、今回は両社の経営統合を前提に改めて解説する。
今回の経営統合は明らかに日産の救済策である。日産とホンダは新型EV(電気自動車)の共同開発を軸にする提携を発表しているが、業績が大幅に悪化し経営危機に陥った日産を救済せねばこの提携は崩れるからだ。よって、今回は対等の経営統合ではなく、ホンダが主導権を握って日産を救済するという点を明確にする必要があろう。
台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業(鴻海)が日産への出資に動いている等の報道もあるが、2社での話し合いだけでも難しいのに、鴻海が日産の株主になると経営再建がより困難になるので、これは避けたいだろう。鴻海には、日産の社長の座争いで内田誠社長に敗れて日産を去ったと言われる関潤氏がいる。彼は、永守重信氏に見込まれて入社したニデックでは実績を残すことができず、鴻海に移籍して自動車関連で手腕を発揮しているようだ。
「日産は内田体制下で十分な成果を上げられなかった」と考えているはずの関氏が率いる鴻海は、ルノーからの日産株の買い取りなどあらゆる手段を講じて日産の株主になり、新連合を構築する中で日産の再建を目指したいのだろう。この問題は進展を待つしかない。