15年後に生き残れるのは、どのような自動車メーカーなのか? 脱炭素化、AI普及など、世界が「ニューノーマル」(新常態)に突入し、ガソリンエンジン車主体の安定した収益構造を維持できなくなった企業が考えるべき新たな戦略とは? シティグループ証券などで自動車産業のアナリストを長年務めてきた松島憲之氏が、産業構造の大転換、そして日本と世界の自動車メーカーの、生き残りをかけた最新のビジネスモデルや技術戦略を解説する。
第12回は、自動車産業に影響を及ぼすと予想される2025年の注目の変化・潮流を徹底解説。来年も激動の1年になりそうだ。
「トランプ2.0」「インフレ」…2025年の重要課題は?
いつも年末になると、翌年の重要な経営課題などを箇条書きで整理することにしている。2024年は世界の政治や経済で重要な変化が起こり企業経営にも大きな影響を与えたが、2025年も激動の1年になるだろう。
- 米国のトランプ政権2.0のアンチ環境政策への転換と石油産業の復活
- 米国におけるESG投資の縮小
- ブロック経済化の進展(米中覇権戦争、ロシアのウクライナ侵略戦争、中東情勢の変化)
- 中東情勢のさらなる不安定化によるエネルギー危機の巨大化
- 食糧危機の深刻化
- 気候変動リスクの巨大化(猛暑、洪水)による災害被害の激増
- インフレの急進行と企業倒産件数の増加による不況の再来
- 賃金上昇など雇用条件の変革や雇用バランスの変化などとも関連する貧富の格差の拡大
- 円安と外国人投資家主導の日本株上昇から日銀金利引き上げによる円高転換と株価下落への反転
- 犯罪の拡大
前回は、『アメリカ・ファースト』を基本政策とするトランプ政権2.0による自動車業界への影響について語ったが、アンチ環境政策への大転換により、旧来型の石油依存の産業が短期的かもしれないが復活するのは明らかだ。これらの旧来型の産業インフラはすでに整っているため、過剰な環境への配慮をしなくてよくなる企業は工場などの稼働率アップで収益が大幅に上昇するだろう。