本コンテンツは、2021年2月26日に開催されたJBpress主催「公共DXフォーラム2021」の特別講演Ⅱ「公的セクターのDXへの期待」の内容を採録したものです。
株式会社日本総合研究所
チェアマン・エメリスタ(名誉理事長)
高橋 進氏
デジタル化は事業者、国民、行政にメリットがある
日本はデジタルID、つまりマイナンバーカードの普及が遅れており、いまだに普及率が24%です。(行政サービスのデジタル化が進んでいる)エストニアとは言わないまでも、例えば、インドでは13億人の人たちが、既に生体認証を実現しています。日本は行政手続きのオンライン利用率もOECD平均利用率をはるかに下回っていて、先進国中、最低レベルということではないでしょうか。
改めて、デジタル化の遅れがあらわになったわけですが、必ずしも過去、政府は手をこまねいてきたわけではありません。政府は、何度もデジタル化を推進しようとしてきました。
行政手続きをデジタル化することのメリットは、事業者、国民にとってはコストの削減、手間の削減、あるいはサービスの高度化ということがありますが、実は行政にとっても非常にメリットがあり、コストの削減、あるいは人員の再配置の余地などが挙げられます。そして、政府はデータを活用して、より高度な行政ができるということをうたってきました。しかしながら、なかなか進んでいなかったというのが現状です。
私は、手続きのオンライン化だけではなく、デジタル技術やデータの活用によって、例えば、少子高齢化、人口減少、あるいは潜在成長率の低下、社会保障制度の効率化、地方における人手不足や地方の活性化、こうした日本が直面している問題を解決するためにも、デジタル化が必要なのではないかと考えています。
コロナのことがあって、ようやく日本も本格的なデジタル化に向けての動きが始まってきたと思います。
コロナ禍を乗り切るために、実は2つのことが大きく動き出しました。
その1つが、オンライン診療の解禁です。かかりつけ医がある方がオンラインで診療を受けるということはもちろんですが、若い人など、かかりつけ医がない人も初診からオンラインで診療を受けられる。一応、時限的ですが、それが実現しました。
もう1つはオンライン教育です。日本はオンライン教育も遅れているといわれていましたが、文部科学省の決断で、今年度中に小中学校の全児童・生徒に、PCタブレットを配布するということが決まりました。