進化するスマートシティ、EUの事例から見た現在地

市民との共創から生み出される「人間中心の新しい都市の姿」

JBpress/2021.3.11

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※本コンテンツは、2020年12月1日に開催されたCDO Club Japan主催「CDO Summit Tokyo 2020 Winter」の特別講演「欧州のスマートシティからみる未来のデジタル社会」の内容を採録したものです。

メディア美学者
「武邑塾」塾長
武邑 光裕氏

スマートシティ成功の鍵は「市民の積極参加」にある

  IT専門の調査機関IDC(International Data Corporation)が発表したデータによると、2023年までに世界のスマートシティ計画には約20兆円が投資されると予測されています。しかし、巨額の投資にもかかわらず、テクノロジーをどうやって都市に実装していくのか、さまざまな論点が残されています。

 例えば、昨年、トロントの大規模スマートシティである「サイドウォーク・ラボ」(Googleの親会社Alphabet傘下のSidewalk Labsによるトロントのウォーターフロント地区再開発)の中止が正式に発表されました。なぜ中止に追い込まれたかというと、市民のプライバシーやデータプライバシーの管理が懸念されてきたからです。

 スマートシティとは、「誰もが都市のイノベーションを提案し、成長を続けていくエコシステム」と理解してよいと思います。その中で市民の創造性を中心にして、いかに都市を大きく成長させていくかが課題になります。

 多くのスマートシティ計画では、市民の積極的な参加が議論されています。しかし、昔から市民参加の実現は簡単ではないといわれています。そのような中、ヨーロッパで市民参加が確実に成功した都市は、私の知る限りではバルセロナとアムステルダム、ベルリンの三都市です。後ほどバルセロナの事例についてお話します。

 ヨーロッパでは、この10年の間にSmart Cities 1.0から3.0まで段階的に進化してきたといわれています。1.0は「主要な大手テクノロジー企業が率いるテクノロジー中心のビジョンによって、イノベーション主導型の都市を創出する」という段階でした。2.0になりますと、今度は「行政や政府主導のイノベーション」が入ってきます。そして今迎えている3.0の段階は、まさに「市民との共創に基づいた人間中心のスマートシティ・ビジョン」ということになります。