エイチ・ツー・オー リテイリング 経営企画グループ オープンイノベーション推進部長 兼 千里中央公園パークマネジメント 代表取締役社長の杉本良平氏(撮影:榊水麗)

 阪急阪神百貨店を傘下に持つエイチ・ツー・オー リテイリングは、子会社を通じて大阪・豊中市の千里中央公園の管理・運営に乗り出した。地域と共に自走型マネジメントを進め、新しい公共空間の在り方を模索する背景には、衰退した店舗と地域の再生という課題がある。なぜ同社は公園に着目し、事業化へと踏み切ったのか。経営企画グループ オープンイノベーション推進部長 兼 千里中央公園パークマネジメント 代表取締役社長の杉本良平氏に聞いた。

元気をなくした大型店から見えた「地域の課題」

――百貨店事業を中核とするエイチ・ツー・オーリテイリング(H2O)が、自治体と連携し、公園の運営という異分野の領域に参入したのは、大きな転換点だったと思います。どのような背景があったのでしょうか。

杉本良平氏(以下、敬称略) 確かに、百貨店事業と公園の運営とはなかなか結び付きにくいと思います。私たちとしても、当初から明確なビジョンがあったわけではなく、地域の課題に直面する中で手探りで見つけていった道でした。いったん2018年にさかのぼって、順を追ってそのプロセスを説明します。

 2014年、H2Oは関西を地盤にGMS(総合スーパー)を展開するイズミヤと経営統合しました。その中で大きな経営課題となったのは、同社が抱える大型店舗の再生でした。私自身、スーパー事業はまったくの素人だったのですが、これまでのキャリアでは新規事業を任される機会が多かったこともあり「イズミヤの在り方を考える」というミッションを2018年に経営層から与えられたのです。

 実際にイズミヤの各店舗を回ってみると、店だけでなく、町全体が元気をなくしているのを肌で感じました。