(右)メディア美学者 「武邑塾」塾長 武邑 光裕氏(左)CDO Club Japan 代表理事 加茂 純氏

※本コンテンツは、2020年12月1日に開催されたCDO Club Japan主催「CDO Summit Tokyo 2020 Winter」の特別対談「デジタル時代のスマート社会の実現に必要な要素とは~海外のスマート社会の先行事例からの示唆~」の内容を採録したものです。

EUと日本で異なる「データ保護の捉え方」

加茂氏 武邑先生、今回はベルリンからお越しいただき、ありがとうございます。先生が前回、日本に帰ってこられたのが2020年の2~3月だったと思うのですが、そのときから今まで、政権自体にもデジタル庁ができるというように、DX(デジタルトランスフォーメーション)は非常に進展しています。

 われわれは日本国内にいるので分かりにくいところがありますが、普段、海外におられる先生からご覧になって、日本におけるDXの進み方はどのように見えているのでしょうか。率直に良い面、あるいは危惧する面を教えてください。

武邑氏 久々に日本に帰ってきてタクシーに乗ったのですが、車内で「従業員のパソコンを全部可視化して、仕事の動機付けに使っていこう」といった内容のタブレット広告を見ました。それを見た時に度肝を抜かれまして、こういうものを許容する日本の文化も分からなくはないのですが、ヨーロッパではまずあり得ない仕組みなんです。

 これをヨーロッパで実装して使う企業がいたら、雇用主はGDPR(EU一般データ保護規則)で処罰されてしまいます。こういった面で世界と日本の間にかなり大きな差異があるように思えます。しかし、逆にそれをうまく活かして、日本的な振る舞いや考え方を世界に提案することもできるのではないでしょうか。非常にネガティブに捉えられる可能性もあるのですが、一方でポジティブに変換できる可能性もあるのではないかと考えています。

加茂氏 確かに社員のデータを全部可視化して、それによって働き方を見るというのは管理している感じが非常に強くなります。そのあたりに関しては、われわれは「何となくそんなものかな」と思ってしまうのですが、やはり注意していかなければいけない、ということですね。