より良い社会の実現を目指す、ESGのM&A戦略

逆境を強みにするM&Aと、それを支えるCFOの役割

JBpress/2021.3.31

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※本コンテンツは、2021年2月25日に開催されたJBpress主催「ファイナンス・イノベーション2021」の特別講演Ⅰ「ESGのM&A戦略〜よりよい社会の実現を目指して〜」の内容を採録したものです。

GCA株式会社
代表取締役
渡辺 章博氏

M&Aと共に歩んできたGCA

 私がCEOを務めるGCA株式会社は、日本発のグローバルM&Aのアドバイザリー会社です。最近はM&Aの仲介会社もたくさんありますが、GCAの特色は日本以外にも、アメリカ、ヨーロッパ、アジアなど世界各国に25拠点を構え、グローバルに事業を展開しているところです。売上約220億円のうち、7割を海外企業同士のM&Aが占め、その中のほとんどがテック系、DXの案件となっています。

 GCAもまたM&Aを繰り返して成長してきた企業です。2004年に創業し、2006年にM&Aの会社として初めて東証マザーズに上場しました。それを皮切りにアメリカのシリコンバレー、ヨーロッパ、イスラエルの企業、そして直近では2020年4月に北欧のステラ社とのM&Aを経て、現在に至ります。

 今回の講演では、長期的な企業価値を高めるために必要な考え方、 環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取ったキーワード「ESG」についてお話をしていきたいと思います。

 まず私の経歴からお伝えしますと、もともとのスタートは会計士でした。日本で会計士になった後、1982年にアメリカに渡り、ニューヨークにある会計事務所で、日本企業の会計作業を担当。プラザ合意があった1986年以降は、急激な円高のなかで各企業のM&Aをお手伝いしながら、M&Aの専門家になりました。

 私がアメリカに行った時に驚いたのが、アメリカには「連結会計」という言葉が存在しなかったことです。日本ではまだ単独会計が主流の頃、アメリカでは基本的に単独決算が禁止されていて、決算と言えば連結決算しかなかったので、その言葉そのものがなかったのです。

 担当していた企業の子会社の財務状況が非常に悪く、本社がミルク補給して黒字にしているケースがありました。しかし、これを見た当時の上司が、「これは実態通りの決算書ではない。資本取引に当たるので収益計上はできない」と言ったのです。私はこの時、「サブスタンスオーバーフォーム(Substance over form)」という言葉に初めて出会いました。

 つまり会計とは、契約や形式に従って決算書類を作ればいいのではなく、できあがった決算書が経営の実態を反映していないと意味がない、ということです。私はこれが本当にショックでした。それ以来、自分が上場企業の経営者の立場になった今も、サブスタンスオーバーフォームを意識して取り組んでいます。

 日本は長期間にわたり、単独決算の中で経営判断や意思決定をしてきました。しかし、この30年で急激な環境変化を迎えています。日本に連結決算が導入されたのは40年前です。20年間、連結決算と単独決算を並列に行う時代がありましたが、その時も連結決算は補助的なもので、単独決算が中心でした。

 エンロン事件が起きた2000年代初めになってようやく、連結決算が主たる決算書に格上げされました。つまり、日本は連結決算が主になってまだ20年しか経っていないのです。そして、その間に「ROEを重視しましょう」という伊藤レポートが出されましたが、この伊藤レポートの登場から数えても、まだ6年しか経過していないのです。