2013年のG8サミット(主要国首脳会議)で、オープンデータ憲章による国際的な合意として、税金を使ってつくられたデータは全て公共財として公開すべきであるという「Open by default」の考え方が採用された。これにより公共機関の持つデータの価値が、大きく動き出した。デジタル時代に最適化した社会をつくるためには、公的機関の保有するデータを社会全体で活用していくことが重要だ。オープンデータの考え方とその取り組みについて、リンクデータ代表理事の下山紗代子氏が解説する。

※本コンテンツは、2022年2月17日に開催されたJBpress主催「第3回 公共DXフォーラム」の基調講演Ⅱ「今こそ、オープンデータでデジタル社会へアップデート!」の内容を採録したものです。

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データの共有がもたらす社会変革

 データには、組み合わせていくほどに新しい価値が出てくるという性質がある。そのことを米サンフランシスコ市の事例が示している。

 サンフランシスコ市では、飲食店に対して実施した保健衛生検査の結果が公開されている。飲食店レビュー掲載サイト「Yelp(イェルプ)」は、その検査結果をサービスに取り込み「Health Score(ヘルススコア)」として100満点のスコアに変換、各飲食店のレビューページに表示している。同ページでは、直近の保健衛生検査における違反項目などの詳細が確認でき、飲食店の利用者がより安心・安全な店を選ぶことを可能にした。既存のサービスとオープンデータを組み合わせることによって、新しい価値が生み出されているのだ。下山氏は、この事例からデータがもたらす社会変革が見て取れると語る。

「この事例では、市と企業がお互いの弱みをお互いの強みで補完し合う関係ができています。行政機関のサイトは一部の限られた人しか見にこないという弱みがあります。また、Yelpの方でも営利企業である以上、独自に飲食店を評価するスコアを付けるとしたら、公平性の担保が問われる点が弱みになります。一方で強みは、市は市民の安全を守るために実施する調査なので、公平なデータが提供できます。Yelpは店舗の営業情報や口コミなどユーザーの求める情報が豊富で、多くのユーザー(の声)が集まる場ができています。双方のデータを共有することで『組織を超えて得意分野を分担できる社会』が実現しつつあると言えます」

地域を持続可能にする官民協働という連携

 従来は公共サービス運営の主体は行政であり、税金によって公共サービスが提供されてきたが、今後、人口減少などにより税収が減ると、同等のサービス維持が困難になる。そのような状況で地域を維持していくために必要となるのがオープンデータだという。

「先述の事例のように、オープンデータは組織を超えて得意分野を分担できる社会を実現するために必要なものです。税収が減る状況下で不足していくサービス提供の資源について、民間企業や研究機関、シビックテック団体などの外部と協働し、運営を民間が手伝える形にしていく必要があります。行政は行政にしかできないことに集中し、民間が得意なところは民間に任せるという官民協働が、地域を持続可能にするでしょう」