「健康経営優良法人」の中小規模法人部門で、2018年から5年連続で認定されているタニタ。今でこそタニタ食堂で健康のイメージが付いた同社だが、健康経営に取り組み始めたきっかけは2008年にさかのぼる。
2008年、厚生労働省主導で特定健診・特定保健指導がスタートした。1年に一度、40~74歳の対象者は特定健診を受診し、生活習慣の改善が必要な人は保健師や管理栄養士など専門スタッフによる保健指導を受ける政策だ。
奇しくも、ちょうどタニタでも谷田千里氏が社長に就任したタイミングだった。谷田氏が社内を見渡すと、健康を促す立場であるはずの自社でもメタボ体形の社員がいることに気付いた。社員が毎日、元気に働くことは企業の成長に寄与するが、目で見えない健康を「数値で可視化する」ことが当時はまだ一般的ではなかった。「社内から健康になる仕組みを作ろう」と、仕組み作りに取り組み始めたのが「タニタ健康プログラム」の始まりだ。
「タニタ健康プログラムには『はかる→わかる→気づく→変わる』のPDCAサイクルがありますが、『はかる』を当たり前にするための仕組みは試行錯誤してきました。また、特に実行・改善フェーズに当たる『変わる』には高いハードルがあります」と、タニタ取締役の丹羽隆史氏は語る(肩書きは取材時)。
まずは2009年、現在の運動量を「はかる」ことを意識させるために社員にUSB形式の歩数計を持たせた。だが、実際に普段の歩数を把握すると、安心して歩数計を持つのをやめてしまう社員が増えた。2011年にはよりデータ管理がしやすいようにフェリカ通信形式に、2014年には歩数計を活動量計に変更し、消費エネルギー推移も確認できるようにした。自分の健康状態をより正確に把握できるようにはなったが、活動量計を携帯することを忘れるなど、またもや新たな問題が起きた。