2024年7月25日に神奈川県横浜市にオープンしたゆめが丘ソラトス店。カジュアル衣料や化粧水、タオルなど日常生活で使用頻度が高い商品を前面に打ち出している

 「無印良品」を展開する良品計画が「日常生活の基本を支える」ブランドへと大きく変わろうとしている。商品開発では日々の暮らしで使う商品を拡充。店舗もかつては駅ビルや広域型ショッピングセンター(SC)を中心に出店し成長を続けてきたが、近年では地方の食品スーパー隣に出店し、消費者が暮らす生活圏まで入り込み始めている。この背景には何があったのか。良品計画の現在の戦略とともに解説する。

〈戦略〉「第二創業」を掲げ、2大ミッションの実現に取り組む

 良品計画は2021年9月に就任した堂前宣夫新社長の下、「第二創業」を掲げる中期経営計画(2022年8月期~2024年8月期)を始動させた。

 その中期経営計画では「生活に欠かせない基本商品群を手に取りやすい価格で提供する」「店舗に地域のコミュニティセンターの役割を持たせ、地域課題に対して取り組む」という2大ミッション(使命)を明確化。

 「新たに生活圏に進出し、地域のニーズをくみ取るために店長が自ら考えて営業施策を実行する『個店経営』を軸とした地域密着型の事業モデルを築き、全国津々浦々に向けて出店を加速する」という方針が打ち出された。

 具体的には「地方の地元食品スーパーの横などに売場面積600坪超で出店し、食品スーパーなどとともにその地域での生活圏コミュニティセンターを構成する」というのだ。

・2017年ごろから商品政策が変化

 生活圏に進出することの根底には、無印良品は「日常生活の基本を支える」ブランドでなければならないという考え方がある。

 スタート当初から衣服・雑貨、生活雑貨、食品と総合型の商品構成だったが、これまでは大都市部や地方都市の広域型SCなどへの出店が多かったことで、必ずしも日常生活を十分にカバーできているわけではなかった。少しおしゃれなファッションブランドというイメージも付いていた。

 商品政策に変化が見られたのは2017年ごろ。当時の松﨑曉社長が「無印良品は生活の基本を担う」と語り始めた。靴下やタオル、スリッパ、白のTシャツといった日常生活で使用頻度が高い商材を戦略的に強化。価格も見直し、より買いやすい水準に引き下げた。

 そして、調味料と加工食品、菓子しかなかった食品のカテゴリーを拡大。2017年7月に大型店の有楽町店(東京都)に青果売場を初めて導入、2018年3月に移転・増床したイオンモール堺北花田店(大阪府)では鮮魚や精肉まで広げ、生鮮食品を扱った。2018年秋からは冷凍食品にも参入している。

2018年9月に販売を始めた冷凍食品。最新の店舗(ゆめが丘ソラトス店)では食品スーパーのような大型の冷凍ショーケースに冷凍ご飯や総菜、ピザ、デザート、ミールキットなどをそろえている