「無印良品」を展開する良品計画が「日常生活の基本を支える」ブランドへと大きく変わろうとしている。商品開発では日々の暮らしで使う商品を拡充。店舗もかつては駅ビルや広域型ショッピングセンター(SC)を中心に出店し成長を続けてきたが、近年では地方の食品スーパー隣に出店し、消費者が暮らす生活圏まで入り込み始めている。この背景には何があったのか。良品計画の現在の戦略とともに解説する。
〈戦略〉「第二創業」を掲げ、2大ミッションの実現に取り組む
良品計画は2021年9月に就任した堂前宣夫新社長の下、「第二創業」を掲げる中期経営計画(2022年8月期~2024年8月期)を始動させた。
その中期経営計画では「生活に欠かせない基本商品群を手に取りやすい価格で提供する」「店舗に地域のコミュニティセンターの役割を持たせ、地域課題に対して取り組む」という2大ミッション(使命)を明確化。
「新たに生活圏に進出し、地域のニーズをくみ取るために店長が自ら考えて営業施策を実行する『個店経営』を軸とした地域密着型の事業モデルを築き、全国津々浦々に向けて出店を加速する」という方針が打ち出された。
具体的には「地方の地元食品スーパーの横などに売場面積600坪超で出店し、食品スーパーなどとともにその地域での生活圏コミュニティセンターを構成する」というのだ。
・2017年ごろから商品政策が変化
生活圏に進出することの根底には、無印良品は「日常生活の基本を支える」ブランドでなければならないという考え方がある。
スタート当初から衣服・雑貨、生活雑貨、食品と総合型の商品構成だったが、これまでは大都市部や地方都市の広域型SCなどへの出店が多かったことで、必ずしも日常生活を十分にカバーできているわけではなかった。少しおしゃれなファッションブランドというイメージも付いていた。
商品政策に変化が見られたのは2017年ごろ。当時の松﨑曉社長が「無印良品は生活の基本を担う」と語り始めた。靴下やタオル、スリッパ、白のTシャツといった日常生活で使用頻度が高い商材を戦略的に強化。価格も見直し、より買いやすい水準に引き下げた。
そして、調味料と加工食品、菓子しかなかった食品のカテゴリーを拡大。2017年7月に大型店の有楽町店(東京都)に青果売場を初めて導入、2018年3月に移転・増床したイオンモール堺北花田店(大阪府)では鮮魚や精肉まで広げ、生鮮食品を扱った。2018年秋からは冷凍食品にも参入している。