2024年2月期の営業利益は過去最高益を更新したのは、小売事業が好調で、中でも課題だったGMS事業の収益力が増したことが大きい

 イオンがプライベートブランド(PB)「トップバリュ」を戦略の中心に据えた商品本位の改革を進めている。同社は前中期経営計画(中計、2018~2020年度)で地域密着、デジタル時代への対応、アジア市場の取り込みを進めてきたが、今中計(2021~2025年度)ではこれらを深耕・進化させるとともに、新たに「イオンにしかない独自価値」の商品を企画・開発する戦略などを掲げ、小売事業の復活を目指した。こうした戦略が実を結び始め、これまで相対的に劣勢だったGMS(総合スーパー)などの小売事業も稼ぐ力を取り戻してきた。イオンの現況、好業績の裏にある戦略、今後の展開を、数字を基に解説する。

〈戦略〉PBのさらなる強化で、売上高と粗利益を拡大

 イオンは今中計で①「デジタルシフトの加速と進化」、②「サプライチェーン発想での独自価値の創造」、③「新たな時代に対応したヘルス&ウエルネスの進化」、④「イオン生活圏の創造」、⑤「アジアシフトの更なる加速」を成長戦略として掲げた。

 2023年度(2024年2月期)はこれらの戦略のうち、②の「独自価値の創造」が大きく前進した。

・「トップバリュ」は1兆円を突破

 イオングループの2023年度のPB売上高は約1兆4000億円と前期に比べ1500億円増加。中核となる「トップバリュ」は約1兆円を達成し、前期に比べ10%伸びた。

 イオンは「PBの成功の有無が企業経営に大きな影響を及ぼす」(吉田昭夫社長)としてPBを商品戦略の中心に据えた商品本位の改革を進めてきた。

「PBの成功の有無が企業経営に大きな影響を及ぼす」とイオンの吉田昭夫社長

 他社にはない独自価値を追求するとともに、2023年春に「トップバリュ」を①価値訴求型の「トップバリュ」、②自然や環境に配慮した「グリーンアイ」、③価格訴求型の「ベストプライス」の3ブランドに再編。前期は全アイテムの50%に当たる約2500品目を新商品の投入やリニューアルによって刷新した。若い世代を狙った新シリーズも相次いで発売している。

 また、急激な物価上昇による消費者の節約志向の高まりに対応し、購買頻度の高い商品を中心に値下げを実施。量目(商品の重さ)を減らすメーカー商品が多い中、増量企画も行った。

 この取り組みによって、2023年度はこれまで相対的に劣勢だったGMSなどの小売事業が稼ぐ力を取り戻してきている。

 2024年度(2025年2月期)は「トップバリュ」を売上高約1兆1000億円に拡大する計画。消費の二極化に対応し、既存のメーカーの商品にはなかった価値の提供と生活必需品における価格戦略の両軸で取り組む。

 傘下の小型スーパーマーケット(SM)であるまいばすけっとやコンビニのミニストップで「トップバリュ」の取扱比率を大幅に増やす実験も始めた。2025年度には地域やカテゴリー、業態限定のPBを含めたグループPB売上高で2兆円という目標を掲げている。

PB「トップバリュ」では2023年3月に野菜や肉、海鮮素材など具材を多くした「もぐもぐ味わうスープ」シリーズを発売。「価値訴求型」と位置付けた「メインストリーム」と呼ぶ赤いラベルのブランドで展開し、好評を博した