![](https://jbpress.ismcdn.jp/mwimgs/5/9/1200mw/img_594f2025d0e49e79c2bb4cadd6c59541248332.jpg)
イオンフィナンシャルサービスは、小売り大手のイオン傘下の総合金融企業だ。リテールフルバンキングサービスを提供するイオン銀行や、カード事業を手掛けるイオンクレジットサービス、海外子会社などをまとめる事業持ち株会社でもある。イオンは大型モールからコンビニまで多様な規模で展開する小売事業を基盤に「イオン生活圏」の構築を目指し、イオンフィナンシャルサービスは「それを金融サービス面からつなぐインフラ作りの役目を果たす」(同社の2021年2月期決算資料)位置付けだ。キャッシュレス決済を中心に顧客の要望を全て満たそうとしてきたイオンフィナンシャルサービスのDXの歴史をひもとく。
ライフスタイルの変化、規制緩和、フィンテックの台頭など、金融機関の経営環境は激変の一途。今やDXによる変革は待ったなしです。金融業界におけるDXキーパーソンへのインタビューにより、DX戦略の全体像から、データ活用、CX、カルチャー変革、デジタル人材育成まで、金融DXの最新の事例を取り上げます。
- アプリ、メタバース、デジタル広告…千葉銀行がDXで広げる地域課題解決の手法
- 立教大学ビジネスクール田中道昭氏が語る、イーロン・マスクの金融戦略の狙い
- AIやデータ分析基盤をフル活用、デジタルで第一生命の営業はどう変わるのか
- SMBCグループ磯和氏が明かす、画期的なサービスを次々と生み出せた理由
- 顧客の健康応援にまい進するSOMPOひまわり生命のデジタル・データ戦略
- なぜ今、新しいソリューションが必要なのか?MS&ADが保険の枠を広げる理由
- 第一生命HDの新CIO兼CDOスティーブン・バーナム氏が語る「生保DX」の勝算
- 「水素・EV・物流・脱炭素」でリース会社を超える?三菱HCキャピタルの大転換
- 元日銀局長の山岡氏が説く、 デジタル化する社会と金融DXの未来
- 富山第一銀行の取締役が語る「新しい金融体験」の実現に向けた地方銀行の挑戦
- みずほFG梅宮副社長に聞く、新中期経営計画におけるデジタル領域の重要テーマ
- Japan Innovation Review 雑誌版「金融DXの最前線」PDF冊子を期間限定公開中
- 脱自前主義で共創に活路を見いだす、ニッセイ流オープンイノベーションとは
- 「人」を中心に「デジタル」のよさを融合させる明治安田生命のDX戦略
- 地銀DXのトップランナー 北國FHD杖村社長に聞く、全社変革の考え方と進め方
- SMBCグループのDXはいよいよイノベーション量産のフェーズへ突入か?
- CX向上のための金融DX、直面するサイバーリスクにどう立ち向かう?
- SOMPOホールディングス グループCDOが見据えるイノベーションの新しい波
フォローしたコンテンツは、マイページから簡単に確認できるようになります。
顧客起点で始まったカード事業のために創設された
イオンフィナンシャルサービスが手掛けるキャッシュレス決済は多様だ。クレジットカードやデビットカード、電子マネーWAONの他、イオンマークの付いたクレジットカードやデビットカードでのサービス(AEON Pay、モバイルWAON、ポイント払いなど)があり、スマホ上で利用できる。スマホアプリとしては「iAEON」と「イオンウォレット」があり、iAEONではイオンマークの付いたクレジットカードやデビットカードでのAEON Pay、モバイルWAON、ポイント払いなどのサービスを、イオンウォレットではAEON Payを利用できる。
![](https://jbpress.ismcdn.jp/mwimgs/4/8/600mw/img_480d7b8c59d85025e56d89a0df8dc5c596695.jpg)
新卒で三和銀行(現三菱UFJ銀行)に入社。法人営業、リテールビジネスにおけるマーケティングに従事後、2003年にGEコンシューマー・ファイナンス(現新生フィナンシャル)に入社。個品割賦・クレジットカード事業のマーケティング、リスクマネジメントに従事後、レイクブランドの消費者金融事業でのマーケティング担当役員、システム担当役員を歴任。2022年にイオンフィナンシャルサービスに入社し、同年5月より現職。
このいずれもイオンの小売りの顧客網を背景としている。例えば、イオン銀行はイオンのショッピングモールやショッピングセンターに店舗やATMを、またATMはミニストップの店内にも設置している。他のアプリやカードもイオンの小売店での支払いがサービスの基盤となっている。しかし、「イオンの顧客ビックデータを活用して発展してきたのですか?」と問うと、イオンフィナンシャルサービスの杉田哲郎・グループ経営企画部長は、「そういう経緯ではありませんでした」と答える。
ことは1980年、イオンフィナンシャルサービスの創立にさかのぼる。イオンは1980年に当時の小売店ジャスコ(現イオン)の顧客向けハウスカードである「ジャスコカード」を発行した。きっかけは、「当時は一括払いが主流だったが、店舗で家電などを扱い始め、お客さまから分割払いの要望が出てきた」(杉田氏)ためだった。ちょうど世間でもクレジットカードが普及し始めた頃だ。このカード事業を展開するために創設されたのがイオンフィナンシャルサービスだった。
![](https://jbpress.ismcdn.jp/mwimgs/9/c/600mw/img_9c3f2244fd22e65dde6af33e2ddee6b794026.jpg)
2003年に新卒でイオンクレジットサービスに入社後、現場での債権管理、営業を経て、社長室IR推進課へ。イオンフィナンシャルサービス誕生とともに出向し、引き続き投資家・アナリスト対応に従事し、2015年にIR室長。2018年にイオンへ出向し、副社長、相談役の秘書業務を経験。2021年にイオンフィナンシャルサービスに復帰し、同年9月より現職。
イオンフィナンシャルサービスはその後も事業の多角化を進めるが、創立時のいきさつもあり、背景にあったのはやはり顧客起点の視点だったという。
イオン銀行は「『わざわざ街中のATMに出て行って、買い物のためのお金を引き出すのが面倒だ』というお客さまの声を受けて始めた」(杉田氏)。電子マネーも「『現金を持ち歩くことなく買い物をしたい』という顧客のニーズがあった」(イオンフィナンシャルサービスの増田俊之・上席執行役員 グループオペレーション企画本部長)からという。
高額・少額、先払い(チャージ)、即時払い、後払い・・・多様な支払方法を提示する理由について、増田氏は「お客さま、つまり生活者の視点で必要な品揃えをするのがわれわれなんです」と笑う。
![](https://jbpress.ismcdn.jp/mwimgs/7/3/1200mw/img_73a139d62a8f7699dcb9c15e2b3f61ff219548.jpg)