アクサ・ホールディングス・ジャパン常務執行役員兼チーフヒューマンリソースオフィサーの川野多恵子氏(撮影:川口紘)

 フランスの保険会社アクサグループの一員であるアクサ・ホールディングス・ジャパンが、全従業員が「自律的に働ける」仕組みを構築しようとしている。妊娠・出産・育児から家族の看護や介護、DVや家庭内暴力の対応などまで会社としてサポートする福利厚生プログラム「We Care」を提供。アクサが家庭や家族にも目を向けて福利厚生の充実に力を入れる狙いとは。アクサ・ホールディングス・ジャパン常務執行役員兼チーフヒューマンリソースオフィサーの川野多恵子氏に話を聞いた。

人手不足の時代は社員の「ライフイベント」にも気を配るべき

──アクサ・ホールディングス・ジャパンはグループ企業の従業員を対象に2024年4月から「We Care」プログラムを開始しました。どのようなプログラムなのでしょうか。

川野 多恵子/アクサ・ホールディングス・ジャパン 常務執行役員兼チーフヒューマンリソースオフィサー

幼少期から学生時代までの約15年間をアメリカで過ごす。慶應義塾大学を卒業後、カナダ マギル大学大学院にて経営学を学び、スウェーデンへの留学を経て修士課程修了。コーンフェリーやゴールドマン・サックス、メリルリンチ、ステート・ストリートなど欧米系の企業において、人事部門の要職を歴任。2021年10月より現職。

川野多恵子氏(以下敬称略)「We Care」は、アクサがグローバルで人事戦略の根幹に据える福利厚生プログラムです。

「妊娠・出産・育児」「看護・介護」「DV・家族内暴力」「従業員の健康」の4つの柱を中心に、従来の福利厚生プログラムを大きく上回る手厚い支援を用意しています。

「妊娠・出産・育児」に関しては、出産する本人はもちろん、配偶者・パートナーの出産に対しても、8週間(以前は4週間)の育児有給休暇を保障しています。この仕組みがあることで、社会問題になっている「男性の育休取得率の低さ」も解決できると考えています。

「看護・介護」においては、お子さんやご両親などの家族の突発的な看護や病院の付き添い、介護のために特別有給休暇(5日間)を取得できる仕組みを用意しています。14歳以下の子どもや65歳以上のシニア層は、他の年代と比較しても通院回数が多い傾向です。こうした年代の家族がいる社員には一定のニーズがあるものと思っています。

 他にも、「DV・家族内暴力」に関して、表に出にくい被害(※日本では、結婚したことのある人の25.1%が配偶者からの暴力を受けたことがあり、被害を受けた人の44.2%は相談していないとされる)に対応するため、外部の支援機関と契約し、専門的支援を受けられる体制を構築しています。

※令和6年9月 内閣府男女共同参画局「女性に対する暴力の現状」より

 また、「従業員の健康」を守ることも掲げており、例えば女性の月経周期や更年期障害に関するサポートのために、日本の保険会社としては初めて、フェムテック企業のCradle(クレードル)社と提携しています。クレードルを通して、産婦人科などの医療機関との連携もサポートしています。

──社員にこれだけの手厚い支援を約束する理由は何でしょうか。