2024年4月、伊藤忠商事(以下、伊藤忠)ではそれまで1人だった女性執行役員を一気に5人増やし、6人体制とした。大企業で一度にこれほどの女性役員を内部登用するケースは珍しい。そんな同社では、女性活躍推進を担う重要な組織として「女性活躍推進委員会」を設置している。この組織の特徴は、委員の半数が社外役員であり、取締役会の諮問委員会として作られたことだ。なぜ「社外からの目」を重視するのか。同委員会の委員長を務める伊藤忠 社外取締役の中森真紀子氏に聞いた。(前編/全2回)
■【前編】メンバーの半数が社外役員の専門組織設置、「外からの目」で伊藤忠の女性活躍はどう変わったのか(今回)
■【後編】女性活躍の推進も「コミットメント経営」で 異色の組織に宿った伊藤忠の経営思想
委員会の設置は女性活躍に対する「本気度」の表れ
――女性活躍推進委員会は、どのような狙いを持って作られた組織なのでしょうか。
中森真紀子氏(以下敬称略) 大きく2つの狙いがあります。一つは、当社の女性活躍の取り組みについて、社外の目で冷静に捉え、客観的な視点で取締役会に答申するためです。
女性活躍の推進組織を社内に設置するのは珍しくありません。一方、この委員会の特徴は、取締役会に対する諮問委員会という位置付けを取っていること。そして委員の半数が社外、かつ半数が女性となっている点です。
企業の働き方や制度などを変えていく時、社内の人だけでそれを進めるのは簡単ではありません。その会社の中でなじんできた価値観や慣習を自ら改める、時には否定しなければならないのは非常に難しいことですよね。特にかつての商社は、皆さんが想像される通りハードワークが多く、男性中心の業界でした。そういった中で女性活躍を進めるには、第三者の視点や世の中の流れを踏まえた価値観を持った外の目を入れることが重要です。