2023年に日本の乗用車市場に参入、2024年6月に中型セダン「シール」を発売し、参入時に発売を宣言した3モデルが揃った中国の電気自動車(EV)最大手、比亜迪(BYD)。だが、日本での販売台数は今年1~8月の累計で1591台、年換算で約2400台と軌道に乗るには程遠い状況だ。果たして今後どのように攻勢をかけるのか。BYDの日本での乗用車販売を手掛けるBYD Auto Japan代表取締役社長の東福寺厚樹氏に聞いた。
ゲームチェンジャー的な商品を出していくことの重要性
──2023年初頭にBYDが日本でEVの販売を開始してから1年半余りがたちました。順調なことやそうでないこと、いろいろあったと思います。
東福寺厚樹氏(以下敬称略) 発売開始から今年の8月までの顧客向け登録台数は約2900台です。日本へのブランド導入がゼロから始まったという難しさはありましたが、それを考慮してももう少し伸ばしたかったというのが正直なところです。
影響が大きかったのは、制度変更に伴う補助金の削減です。「ATTO3」(アットスリー、コンパクトSUV)は型式認証を取得して一時は補助金額85万円が認められていました。「ドルフィン」(コンパクトクロスオーバー)もPHP認証ながら65万円が認められていましたが、今年4月に両車ともに35万円になってしまいました。その結果、4~6月の販売台数は前年割れの水準に落ち込みました。
──昨年の同時期はATTO3だけでしたが、今年は低価格のドルフィンが加わっていたことを考えると、前年割れは厳しかったですね。
東福寺 販売現場の志気も少なからず落ち込んでいたことは否めません。ただ、今は少し元気を取り戻してきました。その原動力になっているのは6月に発売した「シール」(中型クラスのセダン)です。
昨年発売を予告したのを見てそれを待っていたというお客さまが少なからずいらっしゃいまして、来客、成約とも盛り返しているところです。今の良い空気を何とか維持して今年を締めくくり、来年の導入を予定している新商品で勢いを増せればと考えています。
──EV市場が非常に小さい日本市場の特性を考えるとかなり攻めの姿勢ですね。次に日本に導入するのはどのようなモデルですか。
東福寺 具体的な商品計画についてはまだお答えできませんが、先般リリースしたシールが高い評価をいただいたことで、ハイスペックで技術的に優れたものが手の届きやすい価格で手に入るという、本当の意味でのゲームチェンジャー的商品を出していくことが重要だと改めて感じています。
高性能、高品位な商品を提供するブランドだと認知されれば、小型低価格車を出した時にも「そういうブランドが出した商品なのだから優れた部分があるだろう」という見方をしていただけるようになります。
BYDはOTA(オーバー・ジ・エア/オンラインでクルマのソフトウエアをアップデートできるシステム)を各モデルに実装しているので、ソフトウエア制御で変えられる部分についてはシールで良いとされた点をATTO3やドルフィンなどにも適用することができます。そういうことを間断なく行うことも全体の底上げのために大切だと考えています。