エレベーターやエスカレーターの専業メーカーであるフジテックが、新たな中期経営計画「Move On 5」を策定した。ここ数年で売上高を大きく伸ばしてきた同社は、グローバルに事業を展開する中でどのような成長戦略を描いているのか。昨年、発足した新経営陣の一人として代表取締役専務に就任した中島隆茂氏に、新中計の目指すものを聞いた。
企業の成長に向けた指針となる中期経営計画。そこには、各社が直面する経営課題と、それを解決するために練り込まれた戦略が描き出されています。本シリーズでは、各社の経営トップや経営企画担当役員などへのインタビューにより、各社の描く戦略の“真の狙い”や中計に込めた“意志”を活写します。
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新中期経営計画「Move On5」で目指す10年後の姿
――2022年度を初年度とする前中期経営計画「Vision24」の目標達成度についてどう評価していますか。
中島隆茂氏(以下敬称略) この3年間で売上高は400億円以上伸び、安定的な成長を遂げることができました。その点は大きなプラス評価ができると考えています。ただ一方で中国の不動産不況が深刻化した上に、新型コロナウィルスの流行やロシアによるウクライナ侵攻で原材料価格などがかつてないレベルで高騰したため、収益性は期待値より低くなってしまいました。その点はマイナスの評価をせざるを得ません。
――何が成長エンジンとなったのでしょうか。
中島 グローバルに事業展開している中で、一番大きかったのはインドにおける事業の成長でした。インドはマーケットそのものが大きく成長していますが、そのマーケットのニーズにマッチした、価格競争力のある商品をタイムリーに投入できたことが大きかったと考えています。東アジアや南アジアの地域では収益も確保できました。
――「Vision24」は3カ年計画でしたが、2024年度からスタートした中期経営計画の「Move On 5」は5カ年計画です。計画期間を3年から5年にしたのはどうしてですか。
中島 2023年6月に新しい経営体制が発足したとき、原田政佳社長と佐藤浩輔取締役と私の3人で、改めてフジテックの目指すべき姿について徹底的に話し合いました。そして「人と技術と商品を大切にして、新しい時代にふさわしい、美しい都市機能を、世界の国々で、世界の人々とともに創ります」という経営理念はこれからも変えてはいけない企業としての存在意義であることを確認した上で、10年後の目指す姿を掲げました。
この新中計は、その10年先を見据えながら、最初の5年間ですべきこととゴールを明確にしたものです。そこではこれまでなかったくらい細かいところまで戦略を立てて、公表はしていませんがゴールに向かっての年度ごとの計画も立てました。
建設業界では受注してから納品するまで数年かかるのが通例です。3カ年計画では期中の仕掛かり案件が生じやすくなるため、5カ年計画に変更し、どう改革していくかを定めることにしたのです。
――その間には3人で相当議論したのですか。
中島 グループ経営の強化ということも掲げていますので、3人だけでなく執行役員や社外取締役とも侃侃諤諤(かんかんがくがく)の議論をしましたし、さまざまな分野の外部の専門家などからも意見をお聞きしました。