コンデンサやセンサなどで高い世界シェアを持つ電子部品メーカー、村田製作所は、独自の新製品開発にも力を入れている。新市場を開拓する製品を製品メーカーに提案する他、社会課題解決を目指すスタートアップとも協業し、次世代の事業成長につなげる。独自の製品開発の狙いとは。完成品メーカーとの関係は変化していくのか。新規事業プロジェクトを統括する川島誠氏に話を聞いた。
村田製作所が独自製品の開発に力を入れ始めた理由
――村田製作所は、スマートフォン用の部品など、デジタル社会を牽引するさまざまなデバイス向け電子部品で高いシェアを獲得しています。しかしそれだけではなく、独自の最終製品開発も行っていますが、それはなぜですか。
川島誠(以下・敬称略) いくつかの背景があります。現在、高性能で小型のデバイスが普及しているのは、完成品メーカー側の要望と、当社を含めた部品メーカーの用途提案とが重なって実現してきたものです。
その上で、当社が提供する電子部品によって作られる製品の形が変わってきているということも事実です。
製品の中の部品は、完成品メーカーの要求に応えることで進化する一面がありますが、部品もまた、独自に進化しています。お客さまである完成品メーカーの方とご相談する過程で、私たちから完成品メーカーに完成品の形を「こんなものを作ることができます」とご提案する機会も増えています。当社ではこれを「マーケットアウト」と呼んでいます。
マーケットアウトの発想を、より具体的に進めた形が、当社が独自に開発した製品です。
例えば「疲労ストレス計」があります。世の中にはこういう製品がありそうでなかったため、開発しました。「当社が作るとこうなります」という1つの提案になっています。
また、昨今患者さんが増えている睡眠時無呼吸・低呼吸症の治療に使う、睡眠時に鼻から空気を送り込む装置の「CPAP」ですが、従来のものはサイズが大きく、取り扱いにやや難がありました。これを、当社の部品を使って小型の製品を作りました。コンパクトになったため出張に持っていくことも可能で、これまでにない使い方を提案する製品だと考えています。